ソフトバンクの一塁ベースコーチを今年から務めるのが本多雄一内野守備走塁コーチ(34)。10年、11年と2年連続盗塁王に輝き通算342盗塁を決めたワザを選手たちにアドバイスし、今季のスローガン「奪Sh!(ダッシュ)」の名の通りの走塁改革を引っ張っている。

柳田、上林らをケガで欠く中で、交流戦前の54試合を終えた6月3日時点でパ・リーグ2位の49盗塁。昨年の54試合終了時点の38盗塁より11個も多い。チーム1位の周東は10盗塁。2位の釜元は6個決めている。故障者続出の中、快足が武器の2人は今年初めて1軍に定着し、何とか生き残ろうと必死になっている。

出塁や代走で一塁ベースに来た時に本多コーチは自身の経験から相手のクセや配球の傾向などを与える。本多コーチは「何となくピンと来たことを伝えています。一塁ベース上でひとりでいると不安になるものなので。少しでも走れる材料を渡せば安心する。走者によって言い方はあるが思い切りスタートを切れるヒントと勇気を」と説明してくれた。

釜元は「ミスを恐れずに行けと言ってくれるから、勇気を持ってスタートが切れている。まだ本多さんの要求するレベルに達していないので、頑張りたい」と話す。本多コーチが一塁に戻れると思って指示したリードの幅で帰塁できずけん制死したこともあった。失敗を重ねながらも、釜元や周東が新たなスピードスターになろうとしている。

本多コーチは「僕が現役を昨年辞めたばかりなので、現役に近い感覚がまだあるから、いろんなアドバイスができると思う」と話す。5月30日オリックス戦(京セラドーム大阪)では、同点の8回、デスパイネの打席で強い打球に備え後方を守っていた相手二遊間の位置を確認。普段は走らない一塁走者グラシアルに二盗させ、デスパイネの左前安打で二塁から生還し決勝点となった。工藤監督も「あれは本多コーチのファインプレー。相手がノーマークだった。よく二盗をさせてくれたと思う」と絶賛した。

現役終盤は故障続きで不本意なシーズンが続いていた本多コーチだが、新人コーチとなった今年、工藤監督が思い描く「走る野球」を実践させる大きな戦力となっている。シーズン終了時にさらに機動力を使うチームへ変化していくか楽しみだ。【ソフトバンク担当 石橋隆雄】