広島佐々岡真司投手コーチ(52)が4日、マツダスタジアムを訪れ、新監督就任を要請された。 即答を避けたが前向きな姿勢を見せ、近々正式に受諾を伝えるとみられる。週明けの7日にも新監督が誕生する見込みとなった。

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佐々岡コーチが理想とするのは優勝した91年の広島だと思う。7月13日時点で中日に7・5ゲーム差の3位だったが、そこから盛り返して逆転優勝した。「津田さんのために」と1つになったチームだった。

「炎のストッパー」津田恒実の脳腫瘍が発覚したのは、同年4月だった。佐々岡コーチにとって「本当にあこがれていた。真っ向勝負のスタイルにあこがれた」という存在。「水頭症」と発表されたが、本当の病名を知っていたという。選手だけで集まり「津田さんのために1つになろう」と話し合った。個性派ぞろいの選手たちが、同じ方向を向いた。その先に悲しみが待ち受ける一体感ではあったが、チームとしての力を実感したという。

投手力も充実していた。佐々岡、川口、北別府が先発3本柱で、大野が抑え。チーム防御率はリーグ断トツの3・23と、投手王国の名をほしいままにした。佐々岡はリーグ最多の240イニングを投げ、17勝9敗、防御率2・44。最多勝利投手、最優秀防御率のタイトルを獲得し、MVP、沢村賞に輝いた。「当時は中4日で130~140球投げるのはあたりまえだった」。投手陣はみなプライドのかたまりだった。

佐々岡コーチはそれでも、91年型に固執しない。理想を胸に秘めつつ、気質の違う今の選手をいかに導くかに心を砕く。今季の1軍ベンチでは、先発投手にイニングごとに語りかけ、戦う姿勢が見えない若手は叱責(しっせき)した。優しさと厳しさを持ち合わせ、指導にメリハリをつけた。その手腕に対する評価は高い。

4位に終わったチームにいかに一体感を持たせ、戦力を整えながら優勝を目指していくか。手腕に注目したい。【広島担当=村野森】

現役時代の佐々岡真司
現役時代の佐々岡真司