ユニホームは変わっても、黙々と練習に取り組む表情は変わらない。オリックス竹安大知投手(25)は、昨オフに阪神からオリックスに移籍した。FA移籍した西勇輝投手の人的補償だった。

「どの球団でも自分のやるべきことは変わらない。自分はコントロールの精度。そこが生命線なので」

阪神時代は故障の影響などもあり、3年間で3試合の登板だった。オリックスに移籍した今季は10試合に先発して3勝をマーク。マウンドに上がるチャンスを勝ち取り「本来の力」を発揮した。

ただ、本人には反省の心がある。「年間を通して投げられていない。ケガなく1年間を投げ抜きたい。今はケアとトレーニングを。基礎体力を求めて動いてます」。冷静に分析できるのが竹安の強みだ。

8月17日ロッテ戦ではプロ初完封もマークした。「9回のマウンドに上がったとき…。もう1度、自分の登場曲をかけてもらって、お客さんに拍手で応援してもらった瞬間、感動しました」。移籍を機に花を開かせつつある。

プロ初登板は17年10月5日の中日戦。同点の7回、2番手だった。憧れだった甲子園のマウンドで思い切り腕を振った。打者3人をわずか9球で料理すると、その裏に味方打線が勝ち越しに成功。幸運な? プロ初白星をゲットした。そのウイニングボールは「実家にありますよ。ただ、手渡しはできてなくて…」。当時は虎風荘に住んでいた。静岡の実家で待つ親へ、いち早く届けたいと思い「ゆうパック」で送るほどうれしかった。

ケガに負けず踏ん張ってきた。19歳で右肘を痛め「箸が持てなかったり、頭が洗えなかったり…。でも手術に踏み切らないと野球を続けるのは無理かなって…」。悩み抜き、トミー・ジョン手術を受けた。自身の現在地を徹底して調べ「アメリカの高校生は球速を上げたいからと言って誕生日にトミー・ジョン手術を親にさせてもらうこともある」とプラスに捉えたメンタルもある。

プロ5年目、勝負の20年シーズンを迎える。チームは今季最下位だったが、最高勝率のタイトルに輝いた山岡や最優秀防御率を獲得した山本ら、若手投手が躍動している。竹安も「先発で20試合に投げたい。1年間を通してチームのために働きたい」と気合を入れる。

竹安が教えてくれたのは、環境が変わっても、自分の意志を貫くことだ。【オリックス担当=真柴健】

8月11日、楽天戦に先発したオリックス竹安大知(撮影・浅見桂子)
8月11日、楽天戦に先発したオリックス竹安大知(撮影・浅見桂子)