ロッテ佐々木朗希投手(18)が投げ込んだ“未知の魔球”が、一部で話題を呼んだ。野球の話ではなく、調味料の話だ。

5月23日、球団公式インスタグラム上での「Q&A」企画に登場。ファンからの質問に54問、回答した。「関東に来て恋しくなった食べ物は?」との質問があった。

岩手・大船渡市を巣立って5カ月。「三陸の新鮮な魚介類が恋しいです」といった回答でも、十分模範的だった。「旬のホヤやカキがおいしいです」と付け足せば満点回答だった。

そんな状況での、以下回答である。

「酢の素という、大船渡のしょうゆ店で作られたお酢があるのですが、とっても酸っぱいです」。

…酢の素?

ゴールデンルーキーはとんでもない魔球を放り込んできた。前部署時代から数えれば、大船渡や陸前高田にはのべ50泊近くしたのに「酢の素」なんて1度も聞いたことがない。

慌ててウェブ検索した。正体に迫るサイトは本当に少なく、そもそも水野醤油店にも公式サイトがない。電話番号も分からない。こういう時こそ取材。地元関係者に手当たり次第連絡し、ようやく謎の全容にたどりついた。商品の詳細は、翌日の3面記事で伝えた。「日刊スポーツ 酢の素」でウェブ検索していただければと思う。

岩手県内でさえ多くは出回らない、某人気ショーでもまだ紹介されていない。“超隠し玉”を、このQ&A企画で出してくる感性に驚かされた。水野醤油店4代目の水野一也さん(56)も「地元でも10代、20代の人たちに、うちの酢が話題に上がるなんて普通はないと思うんです」と、突然の出来事に感謝した。

2月、石垣島キャンプ中のインタビューで、特に質問をせず自由に話してもらった。「結構、僕のうわさが流れるじゃないですか。こういう感じの人だよ、とか。野球のスタイルとか。でもたぶん、結構違うと思うんですよ」。

18歳の思いが、今回の「酢の素」からも垣間見える。本当の自分を伝えたいからこそ“細かすぎる”部分にまで、自ら踏み込む。163キロだけでない。まだまだ未知のものが眠っている-。これから始まるプロ野球人生。投球も、人間・佐々木朗希も、どんなものが明らかになってくるのか、興味が尽きない。

暑くなってきた。風のうわさで、佐々木朗も恋しき酢の素に久しぶりに“再会”したと聞いた。シーズン開幕後も1軍に同行しながら、時には故郷の香りも思い出しながら、プロで長く活躍できる頑健な肉体を作っていく。

余談ながら、私も500ミリボトルを入手した。「初めて食べる人はむせる」との声が多かったので、ギョーザをおそるおそる原液につけた。

強烈! 舌がしびれる。何というか、酢の香りがする強炭酸水のような。すぐに、しょうゆをたっぷり加えた。2度目はないかなと心に決めつつ、佐々木朗の「1度これに慣れたら、普通の酢は物足りない」とのコメントを思い出す。1週間後に試しに2度目、その4日後に3度目。魔性の調味料だ。【ロッテ担当 金子真仁】

ロッテ佐々木朗希(2020年3月27日撮影)
ロッテ佐々木朗希(2020年3月27日撮影)