「あ、いけ~ん!」

思わず出た声に、笑ってしまった。プロ野球がようやく19日に開幕したが、その前に行われたソフトバンクの練習試合で、強振した末にファウルとなった時、ソフトバンク柳田が発した言葉だ。ネット裏のかなり上部に記者席があって、そこで試合を見ていたわけだが、はっきり聞こえた。

柳田にすれば、打ちそこなったのだ。ホームランにできたのに…。そんな悔しさが、とっさに生まれ育った広島弁で出たのだろう。非常に楽しかった。無観客の今年ならではの光景だ。観客がいれば、応援歌でかき消され、そんな声は聞こえてこない。

1試合耳を澄ませば、いろんな声が聞こえる。ソフトバンク東浜が打球を左足に当て、いったんベンチに下がったが再びマウンドへ。1球目を投げる前に、亜大の先輩の松田宣が三塁の守備位置から「がんばれ、後輩!」と叫んだ。記者席からも、ちょっぴり笑いが起きた。松田宣の声はとびきり大きいが、他の選手でも投球のたびに気合を入れる声や、フライがあがるたびに声をかけあっている。野球を見ている気がする。


ペイペイドームでのロッテとの開幕カード。2戦目からは、ソフトバンクの打者が打席に入ると、場内放送を使って応援の音声が響くようになった。少しでも観客で盛り上がっているように臨場感を出そうと、球団も工夫している。他のスタジアムでも、右翼席に置いたスピーカーから応援、声援が流れるようになっているという。ファンからすれば選手個人の「応援メロディー」が流れるのは楽しいことだろう。

しかし、私はやはり柳田選手の「あ、いけ~ん!」みたいな声が聞きたい。私にすれば、この「音」が野球の臨場感であり、プロの「聞かせる」野球でもあるような気がする。

7月10日から有観客になるが、当面は最大5000人。静かな観戦も、楽しいと感じてもらえるといいなと思う。【ソフトバンク担当・浦田由紀夫】