さすがだな、T…。

京セラドーム大阪右翼5階席に消えていく、豪快な放物線を見送った。10日の巨人戦の5回、オリックスT-岡田が3ランをかけた。

前日9日の同戦の7回、相手4番の岡本和が左翼5階席にアーチを運んだ。巨人打線は7回2死まで、オリックス先発の宮城に1四球のみの無安打無得点に封じられていた。偉業達成まで、あとアウト7個。場内に高まり始めた記録への期待感を、岡本和の一撃が切り裂いた。負けるものか-の思いが、ノーヒッター阻止のアーチになった。巨人打線の軸に座る4番の意地を見る思いがした。

その相手主砲に、負けてたまるか-と言わんばかりのオリックス4番の1発だった。T-岡田にとって、4年ぶりとなる4番での本塁打。快勝で交流戦勝ち越しを決め、楽天と並んで同戦首位に立った試合後、中嶋監督は「いろいろな不安材料が1つ1つ消えていく」と明かした。

チャンスを作り、走者もかえせる吉田正の力を最大限生かすため、前後を打つ打者の人選はチームの今後を左右する。吉田正の後ろを打つ「4番・T-岡田」は、大きな解決策になったと思う。

オリックスが交流戦王者になった11年前。T-岡田がMVPに選ばれた。その記念で作ったピンクのタオルをお裾分けでいただいた。以来、高校野球の夏の地方大会、甲子園大会の取材の際に愛用してきた。10年の履正社(大阪)・山田哲人(ヤクルト)の夏も、12年の大阪桐蔭・藤浪晋太郎(阪神)らの甲子園春夏連覇も、東海大相模(神奈川)が制した15年の「100年の夏」も一緒に見届けた。

ピンクの布地に記された交流戦MVP・T-岡田の名前を見るたび、05年の大阪大会を思い出した。当時3年の履正社の主砲、岡田は大阪桐蔭に敗れて甲子園に届かなかったが、5年後にリーグを代表する選手になった。球児たちの一瞬を見守る大切さを、タオルを通じて感じた。

今年の交流戦もT-岡田は活躍を続け、オリックスは11年ぶりに王者になった。鮮やかだったピンクは色落ちしたが、タオルも現役生活を続けている。【遊軍=堀まどか】