阪神近本光司外野手(26)にとっても、まさかの“誤算”だったのかもしれない。全日本大学選手権に挑んだ母校の関学大が、1964年(昭39)以来、57年ぶりの8強で大会を終えた。近本は大会前に自身が使用するバットメーカー、ヤナセの試合用バットを5本、練習用バットを7本差し入れしていた。「近本バット」を使った後輩たちは全国の舞台で躍動。3番大谷優斗内野手(4年=大社)はプレゼントされたバットを使用し、準々決勝では慶大の左腕増居から本塁打を放った。

ただ、実はこの差し入れしたバットは「近本モデル」ではなかった。ヤナセで近本と関学大を担当する北村裕さん(46)が説明してくれた。

「近本選手は『基本僕のモデルで』と言ってくれていたんですが…、関西では大人気で在庫がないんです。大学生にはもちろん、最近は高校生も木で練習することが増えましたので。本当は近本モデルを選びたかったんですけど…。代わりにこちらで厳選したものを贈らせていただきました」

ヤナセはNPBでは近本とオリックス福田周平内野手(28)がアドバイザリー契約を結んでいる。大学、社会人野球では高いシェアを誇り、関学大の杉園大樹主将(4年=明豊)も「ヤナセは打感がいいんです。折れにくいので学生にとってはありがたい」と使い心地の良さを語る。元々学生に人気がある上、好調な阪神の選手会長で1番を打つ看板選手が使用しているモデルとなれば…。在庫切れの理由も分かる。

近本がリーグ優勝を手土産に、補充された「近本モデル」のバットを差し入れし、後輩の関学大ナインが再び全国の舞台で躍動する-。そんな秋を楽しみに待ちたい。【阪神担当=中野椋】