野球の道具にはボール、グラブ、バットなどがあるが、「野球らしくない」トレーニング器具には興味を引かれる。プロ野球なら、なおさらだ。DeNAでは川村丈夫投手コーチ(49)が、特殊な形状の道具を持っている。両端を落としたボールのような形状。これを石田健大投手らが投げていた。

投げていたのはボールではなく、バットを輪切りにしたものだった。川村コーチは「(使用の)意図は、僕も昔かまぼこ板を使って投げていたのですが、ボールにどういうスピンを与えられているのか、どう投げたらどういうスピンがかかるのかが分かりやすい」と説明してくれた。

同コーチは神奈川県立の厚木高校時代、かまぼこ板を投げて練習していた。きれいな4シームのバックスピンをかけると、前方に飛んでいく。これを応用したのだ。「縦に握ることができるので、まっすぐ行かないとぶれてしまう。変化球にしても、よりスピンが分かりやすい」。きれいな縦回転がかかると、距離が出る。指をかける面が黒、横が木目なので、色がくっきり分かれている。カーブなどの変化球も、回転がどうかかっているのか、一目瞭然なのだ。

練習で必ずしも全員が使うわけでない。気になった選手に限り、試用の声がけをしている。「みんなそれぞれの感覚があるので、シーズン中に変えてしまうことは難しいので。面白そうだなと思った選手だけに」。石田は昨季までの2年間、防御率2点台で、イニング数を上回る三振を奪ってきた。だが、今季は防御率が5点台と結果が出ず、苦しんでいた。「すごく悩んでいたので。何かのきっかけになればと思った」と川村コーチ。工夫をこらした道具が浮上の一助になるか。【DeNA担当=斎藤直樹】

投球時にスピンを意識するためのトレーニング器具を持つDeNA永池内野守備走塁コーチ(左)。右は考案者の川村投手コーチ
投球時にスピンを意識するためのトレーニング器具を持つDeNA永池内野守備走塁コーチ(左)。右は考案者の川村投手コーチ
投球時にスピンを意識するためのトレーニング器具を持つDeNA渡辺広報
投球時にスピンを意識するためのトレーニング器具を持つDeNA渡辺広報