<ソフトバンク6-0ロッテ>◇19日◇ペイペイドーム

「平成の怪物」と呼ばれた西武松坂がユニホームを脱いだ。引退登板で先発マウンドに立った。渾身(こんしん)の5球だった。最速は118キロ。日米球界で豪腕を披露してきた男の最後は四球で終わった。時は歩みを止めない。「怪物」もまた球史に大きな足跡と記憶を残してグラウンドを去る。松坂の最後のマウンドを中継で見守りながら「10・19」がまたプロ球界にとって記憶の1日になるのだろう、と思った。

西武対日本ハム 1回、交代を告げられた西武松坂(左)はベンチ前で辻監督と握手を交わす(撮影・滝沢徹郎)
西武対日本ハム 1回、交代を告げられた西武松坂(左)はベンチ前で辻監督と握手を交わす(撮影・滝沢徹郎)

もう33年も昔の話になる。1988年(昭63)10月19日。ロッテ対近鉄のダブルヘッダーは球史に語り継がれる大熱戦となった。首位西武を逆転するには近鉄には連勝しかなかった。第1戦を4-3で勝利。ナイターとなった第2戦は延長にもつれ込んだが4-4で引き分け。閑古鳥が鳴いていたロッテの本拠地・川崎球場は超満員に膨れ上がった。得点シーンで近鉄中西ヘッドコーチがグラウンドに飛び出し選手と倒れ込みながら抱き合ったシーンは今も鮮明によみがえる。

10月19日は「ドラマの日」なのだろうかと感じずにはいられなかった。リーグ連覇の夢を逃したソフトバンクはエース千賀が8回途中1安打の好投でロッテに完勝。ノーヒットノーランも期待させる投球ぶりだった。

ソフトバンク対ロッテ ロッテに勝利し、デスパイネ(右)の腕をつかんで笑顔を見せる千賀(撮影・岩下翔太)
ソフトバンク対ロッテ ロッテに勝利し、デスパイネ(右)の腕をつかんで笑顔を見せる千賀(撮影・岩下翔太)

今季限りで退任する工藤監督はリーグVはかなわなかったものの、まだまだチームへ「必勝」のタクトを振り続けている。残り4戦全勝しても楽天次第にはなるが、Aクラス入りの可能性がある限り勝利を追い求めている。今季のV争いがロッテと、球団合併によりバファローズの名を踏襲したオリックスというのも何とも因縁めいているではないか。

「奇跡」とは呼びたくないが、ホークスにとってまだ日本一への道は閉ざされていない。「10・19」がそんな究極のドラマへ導いてはくれないだろうか。【ソフトバンク担当 佐竹英治】