19歳のルーキーは、どんな気持ちで見ていたのだろうか。10月20日の西武-日本ハム戦(メットライフドーム)は西武松坂大輔投手(41)の引退試合だった。ラスト登板を一塁側ベンチで見ていた1人が、日本ハム細川凌平内野手だ。

1年前、指名あいさつを受けた時や入団発表の時から、こう話していた。

「自分で引退を決められる選手が目標です」

「引退試合をしてもらえる選手になりたい」

プロ野球人生のスタート地点で、こんなことを言う選手は初めて見たし、志の高さに驚いた覚えがある。

細川は今季、右手有鉤(ゆうこう)骨骨折もあったが、2軍でしっかり経験を積んだ。そして、同19日にプロ初昇格、即スタメン出場でプロ初安打を放った。「デビュー戦で絶対に1本打ちたいと思っていた」という。思いと結果が伴うだけでもすごいが、舞い上がらずにいつも通りにプレーできていたこともすごい。

遊撃守備も全て落ち着いて処理。「守備はピッチャーの生活がかかっているので、何とかチームに迷惑をかけないように、自分がファームでやってきたことを発揮するだけだなと思っていた」。プロで何年もやっているかのような考え方が、すでに備わっている。

実家は京都の保津川で営業する1920年(大9)創業の老舗水上売店船「琴ケ瀬茶屋」。両親もデビュー戦を見たがっていたそうだが、「家業が忙しいので(両親から)見に行けへんわって。緊急事態宣言が解けて、やっと商売できるようになった。僕も自分の仕事を頑張らないと」と、結果を出して実家にも元気を送った。

プロ2試合目の出場となった冒頭の西武戦では、松坂の引退登板を見た後に2安打を放った。いつか自分も-と、プロ入り時に立てた誓いを再確認したに違いない。今後の飛躍が楽しみだ。【日本ハム 木下大輔】