第2の人生、家族とのリスタートに意外なプランを明かした。西武松坂大輔投手の引退会見。引退試合に先んじて行われた。引退決断に至った経緯、野球への思い、家族への感謝。質問に対し、言葉を選ぶというよりは、気持ちをより正確に伝えようと、言葉を紡ぎながら思いの丈を語った。

「夢と感動をありがとう」の言葉を背に引退会見に臨んだ西武松坂(C)SEIBU Lions
「夢と感動をありがとう」の言葉を背に引退会見に臨んだ西武松坂(C)SEIBU Lions

家族への思いはひときわ強く、笑顔と涙が共存。ユニホームを脱ぎ、米国に住む家族とまず何がしたいか問われると「最近(米国の)家の庭で野菜を育てたりしているんで、そういうことはみんなでやってみたかった。やっていきたいと思いますね」と目尻を下げた。この会見では、肩を痛めた要因が08年に転倒したことだと告白。日常的に手、肘、肩に負担をかけず、細心の注意を払い続けた生活だったのだろう。

5歳の頃からボールを握り、始まった野球人生。プロの後半はけがに苦しんだ。「そういうたいしたことじゃないかもしれないですけど、そういうことをさせてあげられなかったので、これからはそういう時間を増やしていきたいなと思います」。当たり前のことが当たり前にできない生活から解放されて、まず頭に浮かんだことは、グラウンドを離れて家族との共同作業だった。

西武対日本ハム 試合後に場内1周し、最後にマウンドを見つめる西武松坂(撮影・江口和貴)
西武対日本ハム 試合後に場内1周し、最後にマウンドを見つめる西武松坂(撮影・江口和貴)

会見の印象として、あらかじめ話すことを用意していたようには思えなかった。その場に浮かんだ感情やかつての情景を率直に語っていたと思う。だから笑い、ときおり涙を流しながら約1時間の会見は、その23年間のプロ生活同様に中身が濃く、会見全文は618行、7060文字にも及んだ。

会見を終え、壇上を降りようとしたときには背中を見せなかった。直前に変更された背番号18のユニホームを「ファンの方に最初に見てもらいたい」という思いから、カニ歩きで会場を後にした。ラスト5球を前に、平成の怪物が見せた最後のこだわりだった。【西武担当 栗田成芳】

ナインに胴上げされる西武松坂大輔(2021年10月19日撮影)
ナインに胴上げされる西武松坂大輔(2021年10月19日撮影)