「泣かせるつもりはなかったんだけどね…」。

ソフトバンクの本多雄一内野守備走塁コーチ(36)は、頭を抱えながら本音を漏らした。10日に行われた宮崎秋季キャンプ。午後の個別練習で高卒3年目の野村大樹内野手(21)とマンツーマン特守を約2時間行ったが、終了後に野村の目には涙がこぼれていた。

三塁付近でボテボテのゴロを捕球し、一塁へ送球する。いたって普通のノックだったからこそ、涙の理由が気になった。本多コーチは明かす。

「気持ちを切るのは簡単。やっぱり人間は楽をしたいからね。楽をしてないって言っても、動作や顔に出るんですよ。だから周りが楽をしてると見たら、それはしてるんですよ」

もちろん捕球や送球動作の指導もあったことだろうが、野村に一番伝えたかったのは「集中力の維持」だろう。

野村は勝負強い打撃が売りの期待の21歳。ただ藤本監督が「あの守備なら打率4割打たないと試合に出られない」と話すほど、守備が課題になっている。7日には指揮官からも約70分のマンツーマン特守を受けた。1軍首脳陣も手塩にかけて育てている。

現役時代に「ポンちゃん」の愛称で親しまれていた本多コーチも、期待を寄せるからこそ心を鬼にした。「1軍はこういうきつくてしんどいことが毎日あって、精神的にしんどいことも毎日ある。そこに打ち勝っていかないと。頭で考えてプレーするならまだまだ。考え方を覚えこませるっていうことが一番大事」。若手が一皮むけるかもしれない瞬間に出くわした。【ソフトバンク担当=只松憲】

特守で藤本博史監督のノックを受ける野村大樹(2021年11月7日撮影)
特守で藤本博史監督のノックを受ける野村大樹(2021年11月7日撮影)
特守で藤本博史監督のノックを受ける野村大樹(2021年11月7日撮影)
特守で藤本博史監督のノックを受ける野村大樹(2021年11月7日撮影)