一品披露が、プロ野球の新人入寮の風物詩になりつつある。

予感はしていたものの、ロッテのドラフト3位広畑敦也投手(24=三菱自動車倉敷オーシャンズ)はさすがだった。ギターであいみょん「マリーゴールド」を弾き語りし、自身の門出を彩った。

同時にコーヒーのグラインダーも持ち込んだ。メディア露出用にとどまらず、実生活で大いに役立てる。自身や仲間のための1杯をいれる、まさに“ひろはた珈琲”と言ったところ。カフェオレ派の同1位松川虎生捕手(18=市和歌山)も「手でこうやって全部作っているので」と動きを再現するほど。苦手なブラックも「広畑さんのだったら」と1度挑戦したという。

コーヒースペシャリストの資格を取得し、現在も「エチオピアとタンザニアとコロンビア。いろいろあります、パプアニューギニアも。6種類(の豆が)あります」という徹底ぶりだ。

コーヒーも、全て独学で持ち曲40曲に迫るようになったギターも、好きなことへの突き詰め方がすごい。8時間みっちり働いて、野球して、洗濯して、テレビの野球中継を見る余裕なんてなかった社会人時代。さらに趣味もしっかり追求していた。昭和の「24時間戦えますか」を想像してしまうようなバイタリティーだ。その原動力はいったい。

「純粋に楽しむことかなと思います。調子とか、コーヒーなんか特に毎日違うので。野球もそうだと思うし、そういったところが自分は一番好きな部分です。変化を楽しむのがすごく大事かなと思います」

趣味や思いを堂々と自己表現できるのが、またすごい。弾き語りも全く臆さなかった。新天地に行けばたいていの人が緊張するし、様子をうかがう。いきなり目立つには勇気や度胸が必要だし、リスクもある。それでも能動的に動いた先にだけ広がる景色もある。おとなしい選手が多いとされるロッテでどんな化学変化が生まれるのか。

若者の前向きなチャレンジが、明るい未来につながる世の中であってほしい。【ロッテ担当=金子真仁】

新人合同自主トレに参加するロッテドラフト3位広畑(2022年1月14日撮影)
新人合同自主トレに参加するロッテドラフト3位広畑(2022年1月14日撮影)