<日本生命セ・パ交流戦:ソフトバンク11-1広島>◇28日◇ペイペイドーム

若葉がまぶしい季節になって、ソフトバンクにまたニューフェースが現れた。3年目捕手の渡辺だ。プロ初の先発マスクで広島の森下から2打席連続アーチ。いきなり猛打賞&5打点の活躍だ。絶対的な扇の要の甲斐がいる中で、初経験の先発マスク。自慢の打撃で猛アピールして先発大関も好リード。大勝の立役者となった。

ソフトバンク対広島 観客の声援に応える渡辺(撮影・屋方直哉)
ソフトバンク対広島 観客の声援に応える渡辺(撮影・屋方直哉)

身長187センチの大型捕手は、非凡な打撃センスが認められて1軍に昇格した。プロ初打席からの3打席はすべて代打で内野ゴロに2三振。だが、プレーボールからマスクをかぶると急変した。右の手のひらに、楕円(だえん)形に膨れたマメが何とも誇らしい。藤本監督の積極起用に見事に応えたが、急成長を予感していたのは首脳陣だけではない。

今年1月。渡辺は志願して中村晃の自主トレに参加した。打撃を見た中村晃は言った。「アイツはものすごくいいです。すごい打撃をしますよ」。球界でも屈指のバットマンの目は的確だった。ただ、残念だったのは自主トレが始まって間もない1月12日、渡辺は新型コロナウイルスに罹患(りかん)したことだった。一緒に汗を流していた中村晃や栗原らは濃厚接触疑いのため、練習をいったん休止せざるを得なくなった。キャンプに向けた最も大事な時期に自らの感染で先輩に迷惑をかけ、療養期間も気分は落ち込んだ。「本当に申し訳ないです。でも、晃(中村)さんから『気にするな』と言っていただいて…」。先輩の言葉に助けられた。

27日、王球団会長(右)から打撃指導を受ける渡辺
27日、王球団会長(右)から打撃指導を受ける渡辺

プロ野球は弱肉強食の世界。そうそうチャンスは巡ってこない。ド派手な本拠地デビューを飾った21歳の男は、この「瞬間」を逃すわけにはいかない。【ソフトバンク担当 佐竹英治】