いがぐり頭の背番号「36」は俊敏だった。ぴょんぴょんと跳ねるような走り方は19年たっても変わらなかった。ソフトバンク明石が現役にピリオドを打った。チームは激しいV争いのまっただ中。ジリジリするような緊張感。もう1度、1軍のグラウンドで胃の痛くなるような戦いの感覚を味わいたかったが、本音ではなかったろうか。でも、引退会見に臨んだ明石の顔は達成感にも似た晴れやかさがあった。

引退会見を行う明石(撮影・岩下翔太)
引退会見を行う明石(撮影・岩下翔太)

数日前に球団側に「引退」を申し入れた。「自分はそんな選手じゃないと思っていましたけど、本当に19年間、いい思いをさせてもらいました。僕みたいな選手がここまでできるとは」。ケガに泣かされた現役生活でもあった。後年の腰痛で、春季キャンプ最終日に担架で運ばれることもあった。右肩にメスを入れ、右足甲も骨折した。国内FAの権利を取って複数年契約を結んだとき「いろいろと考えたい」と言ったが、本音ではなかった。18歳でホークスのユニホームに袖を通したときから、現役はホークスで終えると心に決めていた。「野球人生の分岐点」と言った千葉でのサヨナラエラー。2軍落ちを告げられ翌朝の便で福岡に戻った。当時の2軍本拠地だった雁の巣球場(福岡市東区)では練習メニューを変更して鳥越2軍監督(現ロッテ2軍監督)が日が暮れるまでホームゲッツーの守備練習に付き合ってくれた。中堅と呼ばれるようになってからは、遠征先で真っ先に向かうのはスポーツジムになった。

自宅には7個の日本一チャンピオンリングが飾ってある。「入団してから7回も日本一になって。ほんとうれしいですよね。誇りに思います」。今日24日、本拠地ペイペイドームで最後のユニホーム姿を披露する。この秋、仲間たちが背番号と同じ「8個目」のリングをプレゼントしてくれると信じている。【ソフトバンク担当 佐竹英治】

03年、ダイエー新入団選手発表で初めてユニホーム姿を披露した新人選手は王監督と記念撮影に納まる。中段左が明石
03年、ダイエー新入団選手発表で初めてユニホーム姿を披露した新人選手は王監督と記念撮影に納まる。中段左が明石