新人王を獲得した西武水上由伸投手(24)が、かつて言っていた。

「将来、スカウトになってみたいんですよね」

2年目の今季は60試合登板の防御率は1・77。35ホールドポイントで最優秀中継ぎのタイトルも獲得。セカンドキャリアを語るには、あまりに早すぎるが、隠れた逸材や、スターの原石を見いだす仕事に興味があるようだ。

もっとも自身は育成ドラフト5位での入団。ギリギリでの指名だった。四国学院大では2年春に首位打者を獲得した。3年秋に投手転向後は最多勝にも輝いた。投打で活躍した。とはいえ、リーグ全体のレベルは東京6大学や東都とは明らかに違う。全注目を集めて、プロの世界に入れたわけではなかった。

とはいえ、当時の水上は信じ抜いていた。「自分はプロになる」。願望や夢とかいう類いではなく、自分の未来を断言していた。かなわない可能性などは一切考えない。自信に満ちあふれて、4年生になっても、NPB入り以外の進路は探していなかった。

厳しきプロの世界。何か突き抜ける武器が必要になる。水上にとっては、それが気持ちの強さだった。何事も超ポジティブに思考できる。不安がよぎることはなく不屈。自分の可能性を信じ抜くことができた。マウンドでも動じない。ピンチの場面も、ここで抑えたらかっこいいなとプラスに自然と考える。並外れた心の強さで、プロ入り後も成り上がった。

大化けの可能性を秘める要素は、どこに隠れているか分からない。決して技術や身体能力に限らない。水上は、その証明でもあった。まだまだ遠い未来の話ではあるが、もしも「スカウトマン水上」が誕生したら…。どんな選手を発掘するか見てみたい。【西武担当 上田悠太】

力投する水上由伸(2022年10月1日撮影)
力投する水上由伸(2022年10月1日撮影)