先に書いておきます。このコラムは野球に全然関係なく、オチもありません。

-・-・-・-・-

局所的に盛り上がる話題というのがある。ロッテ佐藤都志也捕手(24)がツイッターで「付けてたなー笑笑 掃除するときに膝当て」とつぶやいたのが約1カ月前のこと。同じころ、引用リツイート先の投稿に同じことを思っていた。付けてたな~、膝当て。

「膝当て」というのは福島・いわき市周辺の小中学生が清掃時に付けるマストアイテム。雑巾がけする時、床に膝をついても汚れないように装着する、ぱっと見サポーターのような布だ。ツイッターの「いわき市あるある」的な投稿に、佐藤都は反応していた。「自分は当たり前だと思ってたんで。いわきだけらしいです」。膝当てが“全国区”じゃないことを、この時初めて知ったそうだ。

ロッテには同市関係者が結構いる。渡辺啓太打撃投手も、鈴木律子広報もいわき出身。数年前にテレビ番組「秘密のケンミンSHOW」で膝当てが取り上げられた際、鈴木さんの同級生一帯はザワついたという。みんな全国区だと思っていたから。

私と鈴木さんもひとしきり盛り上がった。「膝当てしないと膝汚れますよね」「よそは床に膝つかないで拭くらしいです」「どうやって?」「クラウチングスタート状態だとか」「えー!!」。こちとら四つんばいで力を入れないと、手抜きとみなされ先生に怒られたりするのだ。そりゃ「えー!!」になる。

膝当ては多くの場合、各家庭で用意しなくてはならない。なので子どもの好きなキャラクターの生地で、家族が縫ってくれることが多い。佐藤都は「ウルトラマンでした。小学校だとナップザックとか上履き入れとか、同じ柄で統一されるんで。全部手作りで」。そうだそうだ、膝だけみんなカラフルだったことを思い出す。

私は高校はいわきに通ったが、小中は同じ福島沿岸部の浪江町だった。佐藤都の地元であるいわき市中心部の平地区までは、60キロ離れている。それでも膝当て文化はあった。中学校では真っ白な三角巾と膝当てが全員に支給されていたほどだ。でも小学生のころは親の手作り。関西人の母は「膝当て? 何それ」と思いながら作っていたらしい。

年齢はばらばらなのに、膝当てに関する思い出って大体同じ。だから何、ということはないんです。数年前のテレビだったり、今回のツイッターだったりで、定期的に共通言語として話題になる「膝当て」って偉大だなあと。そういう局所的なホットワードが、選手の地元の数だけあると思うと、ちょっと楽しいな、という話でした。【遊軍 鎌田良美】