日本ハム宮西尚生投手(37)が5月28日楽天戦(楽天モバイルパーク)で今季10ホールド目を挙げた。

2年ぶりに2桁に乗せた数字について試合後に聞くと、「10でしょ。そんなんで、いちいち聞かないでください」と苦笑い。ただ、前人未到の通算400ホールドまで、あと10ホールドにもなったことを伝えると「そっか!」。続けて、完全復活だけを目指している今季の胸の内を、あらためて教えてくれた。

宮西 去年から考えればね、もう勝ちパターンでは投げさせてもらうことはないやろうな、と。ちょっと調子いいぐらいじゃ、全く使ってくれへんやろなっていうのは覚悟の上で、今シーズンを迎えたわけで。その覚悟は、いい方向に。キャンプから若手より、成績は出してきたつもりではあるし。(セットアッパーの8回を)渡されたっていうより、奪い返したっていう感覚の方が強いから。今までより、価値のある10ホールドかな。

昨季は左肘の痛みと闘いながら、シーズン途中で戦線離脱。ルーキーイヤーから14年間続けた50試合以上登板の記録が途切れ、24試合登板で7ホールドはプロ最少だった。引退も頭をよぎった中で、昨年9月に3度目となる左肘手術を受け、16年目の今季に進退をかけた。定位置だったセットアッパーのポジションも失った状態での「マイナスからのスタートで、まぁよくいけた」と、振り返る。

キャンプ中の実戦からオープン戦にかけて地道に結果を残し、シーズン開幕後も結果だけを求めた。ここまで、19試合登板で10ホールド、1セーブを挙げ、15回1/3を投げて失点と自責点は1で防御率0・59(5月28日現在)。「1回でも失敗したら、もう交代させられるっていう覚悟で常に投げている」。1度は失ったセットアッパーの座を“奪い返し”、勝利の方程式に欠かせない、一昨年までの頼りになる宮西がよみがえった。

目標は「初めから岩瀬さん」。通算登板数1002試合の大記録を持つレジェンド左腕を超えることがモチベーションの1つ。交流戦前までに宮西の通算登板数は827試合となった。並ぶまで175試合、抜くまで176試合。「まぁ目標が高すぎるけど。1個ずつ順位を上げていきます」。あと2試合で球団OBでもある歴代6位の江夏豊氏に並ぶ。現状、コンディションも問題ない。体に不安がなければ、技術と経験に裏打ちされた最高レベルの投球ができる。そして「失敗許されへんっていう立場で常におるから」という危機感が昨季までにない新たなパワー。6月2日で38歳になる現役レジェンド左腕のゴールは、まだまだ先にありそうだ。【遊軍 木下大輔】