30度をはるかに超える炎天下。20日の楽天-ロッテ戦前の楽天モバイルパークの右翼付近の芝生に、ロッテの選手らがベンチ前から大移動した。

ベンチに座っていた吉井理人監督(58)も帽子をかぶり直して気持ちを込めるかのように、歩みを進めた。芝生の上に座った監督を中心に、選手、コーチ、スタッフ全員が輪になるかのように次々と腰を下ろした。作業中の仕事を一時停止し、遅れて小走りで加わるスタッフもいた。

指揮官は「我々も目的は何なのかを明確にしようと思って。勝つために何をしたら良いかということを、それぞれに考えてもらうきっかけになるためのミーティングだった」と説明。「自分の責任のもとに、自分の出来ることをしっかり行動してほしいなあと。こっちで言ったからこうしようとかではなくて、自分の頭で考えて動いてほしい。考える時に目的は何なのか。良いスイングしたいというのが目標で、それが出来たら目的につながってくるんですけれど、目標の『良いボール投げたい』『良いバッティングしたい』が先に来てしまうと…」。ミーティングの中では「優勝」という言葉も発し、目的意識を徹底し、そこに向けて各自はいま何をすべきかを、再度自問自答してもらうための、約7分間だった。

前日19日に自責0ながら3失点したペルドモは立ち膝の姿勢。身ぶり手ぶりの大きなジェスチャーを交えながら話した。隣では通訳も一生懸命、日本語で伝えた。坂本、柿沼らも思いを言葉に。全員が真剣な表情。最後は主将の中村奨が締めた。

黒木投手コーチも「監督が講義してくれて新鮮で良かった」と感謝した。「監督が一方的に話すんじゃなくて、選手に投げかけて、選手から答えをもらって、対話をしているので、かしこまった感じにはならないですよね。座って、ストレッチしながらとか」。内容には「大事な時期でもありますし、単純にもう1回、まずは自分のやるべきことをやること。その先にチームの勝利。自分の出来るそれ以上のことをやってしまうとうまくいかないことがあるので、そこを再認識しましょうってことです」。春季キャンプから継続してきたことを、あらためて徹底した時間だった。

選手会長の益田は「これをやったから勝ったとか負けたとかはないかなと思うんですけれど、ただ、やることで、もう1回、みんなチーム全体で頑張ろうとなるし、そういう結束力みたいなものは」と期待した。「中盤から終盤で体もきついし、みんな思うところはあると思うので、もう1回心を1つに頑張るのは大切なことだと思うし、勝っている時は良いんですけれど、連敗する時もあるし、負けている時にどうするかというのはある。監督が集めてくれて本当に良い話が出来たんじゃないかなと思います。勝ち負けはわからないですけれど、姿は変わるんじゃないかなと思います」。普段から投手、野手に限らず、若手を食事などに誘って心に寄り添ってきている守護神も、「心」の変化を強調した。

西村は「自分の仕事を必死こいてやるだけ。自分の結果に左右されずに、チームとしての結果につなげていく」。和田も「自分のことも大事ですけれどチームのために何が出来るのか。三塁ランナーで内野ゴロでも得点するのも自分の役割」。中堅、若手も自身の特徴、持ち味を出し、それをうまくかみ合わせて接戦を白星につなげる。それこそが個人やチームの数字が高くなくても開幕から上位を維持してきた今季のロッテの強さだと、私は思っている。

8月に入り、7勝11敗。22日からは3位ソフトバンク、首位オリックスとの6連戦が始まり、リーグ優勝に前進出来るか、後退してしまうのか。1つのヤマ場を迎える。だが、相手どうこうではない。自分ができ得ること、やるべきことをいかに実行するか-。吉井監督が一貫して重きを置いてきたことを再確認し、首位を追う。

記者として私の出来ることは-。リーグ優勝、日本一に向け、読者やファンの皆さまに、監督や選手の思いを伝える材料の準備。監督、コーチ、選手の皆さま、どんどん話しかけますのでよろしくお願い致します。【ロッテ担当 鎌田直秀】

練習開始前、手を上げるロッテ・ペルドモ。手前左は吉井監督(2023年8月20日撮影)
練習開始前、手を上げるロッテ・ペルドモ。手前左は吉井監督(2023年8月20日撮影)