シーズン開幕10日前の3月19日。ソフトバンク川村友斗外野手(24)はプロ3年目で育成から支配下昇格を勝ち取った。

人知れず喜んだ人がいる。大学時代の恩師、仙台大の森本吉謙監督(49)だ。「頑張ってきたことが報われましたね」。電話越しに柔らかい口調でそう語った。

大学4年間を見届け、秘めたポテンシャルは誰よりも感じていた。

「間の取り方であったり、思い切りよく振れる打者でした」

アマチュア時代から名の知れたスラッガーだった。北海(北海道)から同大学へ進んで年春からベンチ入り。2年秋のリーグ戦では首位打者、最多打点を獲得した。3年秋には最多本塁打、最多打点。4年秋には明治神宮大会で右越え本塁打を放つなど、大舞台でも勝負強さを発揮していた。

森本監督は「おとなしそうに見えて、勝負ごとには闘志を燃やしてやっていましたよ」と振り返る。

2学年上のソフトバンク大関友久投手(26)、1学年上のオリックス宇田川優希投手(25)は大学の先輩にあたる。両選手とも、育成入団で今ではチームの主力として活躍する。森本監督は「それは、もう、本人たちの頑張りでしょ」と目を細めた。

川村は春季キャンプを1軍で完走。オープン戦でも1軍に同行し、3月9日のロッテ戦では決勝3ランを放った。パンチ力が魅力も、12球団トップタイとなる4盗塁の周東に次ぐチーム2位の3盗塁をマーク。外野では好守を連発と走攻守でアピールを続けていた。高校時代までは一塁手だったが「走れて、肩もある」と外野にコンバートしたのが森本監督だった。

背番号は132から61となり、開幕メンバーにも名を連ねた。連絡をもらった際に、森本監督は「本人が一番分かっていますよ」としながらも「ここからが勝負だね」と声をかけた。1軍でのさらなる活躍を期待している。【ソフトバンク担当・佐藤究】

仙台大・森本吉謙監督(2023年6月6日撮影)
仙台大・森本吉謙監督(2023年6月6日撮影)