阪神石井大智投手(27)を支えた球種がある。今季から使用頻度を増やしたスライダー。「マジで成分的には普通のスライダーなんです」と言うが、これが欠かせなかった。特に右打者へ有効。初球の入り、簡単に直球を選ぶのではなくスライダーを投げることが多々あった。「おそらく相手の頭にはない球種ですから」。割と簡単にストライクを取れるシーンが多かった。「自信を持って投げることができるようになりましたね」と振り返る。

握りはカーブと同じ。ひとさし指を立てる、いわゆる「ナックルカーブ」の握り。カーブは四国IL・高知の入団テストで投じ、思い切りワンバウンドになった過去がトラウマとなっていた。それを今季限りで引退した阪神秋山の握りを参考に進化させ今では武器となっている。そのカーブを「ただ強く投げているだけ」というスライダーで相手打者を翻弄(ほんろう)。56試合登板、30ホールド、58奪三振はキャリアハイ。4勝1敗、防御率1・48の安定感でチームに欠かせない存在となった。

22年1月に結婚。妻との何げない日常に幸せを感じる毎日だ。昨オフには妻の「いつかキャッチボールしたい」という願いをかなえるべく浜辺まで愛車を走らせた。2人でキャッチボール。「それが夢だったって言うもんですから」と照れ笑いする。もちろん、だいぶ加減して白球を投げた。一方で野球初心者の妻の独特なフォームに大爆笑し、元気をもらった。それが24年シーズンの原点だった。

飛躍を遂げた1年。立ち止まることなく、オフのトレーニングの計画もすでに立てている。20年ドラフト8位。支配下指名の全体で最後となる74番目に名前を呼ばれた男だ。秋田高専、独立リーグと異色の経歴に「本当に僕の人生は奇跡みたいなもんですよ」と笑う。どこまで突き抜けていくのか。いや、持ち前の探究心と愛妻からもらったパワーで、このままどこまでも突き抜けていく未来が見える。【阪神担当=中野椋】