2軍打撃コーチを2年、1軍打撃コーチを今季まで5年務め、ヘッドコーチへ。立場の違いを、ヤクルト宮出隆自ヘッドコーチ(42)は「視点」から説明する。点をまとめ、つなげて面とし、選手を導こうと考えている。

「打撃コーチが気付かないことはいっぱいある。でも投手コーチ、内野守備走塁コーチは、違う角度から見ていたりする。選手を良くしようと思ったら、いろんな人の意見を聞いて、さまざまな角度から見てあげる。チーム全体を見渡して、みんなで知恵を出し合いたい」

現役時代に、前ヘッドコーチの宮本慎也氏から聞いた言葉が、指導の根幹になっている。ふとした時、宮本氏が「選手の長所を伸ばしていくのと、短所を補う作業は、どっちが大事だと思う?」と周囲にいた人に問いかけた。「長所を伸ばすこと」の回答が多かったが、答えは両方だった。「違うんだよ。両方やらないといけない。なぜならプロだから」。

「相当前に聞いた言葉ですが、鮮明に覚えている。そういう考えで野球をやっているんだなと、すごいなと思った。お金をもらって野球をしている責任感の部分で、大事なことだと思った」

長所を生かして、短所を補う。今季のヤクルトの場合、長所は打撃。青木、山田哲、バレンティン、雄平、そして村上と強力打線を誇った。一方、短所はリーグワースト739失点、チーム防御率4・78の防御だ。5~6月にかけて喫したリーグワーストタイの16連敗についても「1つのアウトを確実に取る、徹底力のなさだったんじゃないかと思う」と振り返る。早速、秋季キャンプから選手には守備の意識を強く伝えた。

「ヤクルトは打撃のチームと言われているが、細かいところをおろそかにしてはダメだし、スキを作ってはいけない。守ること、1球に対する意識の守備は劣っていると思うので、補う作業をしないといけない」

最下位からの巻き返しへ。初めてのヘッドコーチとして臨む来季。「これからは、勝つということが、今までの何倍もうれしくなるんじゃないのかな。分からない部分はあるし、苦しいこともたくさんあると思うが、ヘッドコーチという仕事ができる機会をいただき、ありがたい。挑戦する気持ちが一番です」。新生・高津ヤクルトを支える挑戦が始まる。【保坂恭子】

◆宮出隆自(みやで・りゅうじ)1977年(昭52)8月18日、愛媛県生まれ。宇和島東から95年ドラフト2位でヤクルト入団。02年に投手から野手へ転向。09年に楽天移籍。11年ヤクルト復帰も12年引退。13年からヤクルトコーチ。通算成績は投手で49試合6勝5敗、防御率4・73。打者では701試合で39本塁打、216打点、打率2割7分7厘。現役時は192センチ、90キロ。右投げ右打ち。