<センバツ高校野球:神戸国際大付3-2北海>◇19日◇1回戦

インパクトは大きくなくても、キラリと光るプレーがある。これから大きな花を咲かせるかもしれない選手たちもいる。プロ野球に選手、コーチなどで40年以上携わってきた田村藤夫氏(日刊スポーツ評論家)が、2年ぶりのセンバツで気になった選手たちを紹介する。

北海対神戸国際大付 2回途中、2番手で登板し力投する神戸国際大付・楠本(撮影・滝沢徹郎)
北海対神戸国際大付 2回途中、2番手で登板し力投する神戸国際大付・楠本(撮影・滝沢徹郎)

春の日差しを受けた甲子園の芝生がまぶしい。2年ぶりのセンバツに、選手の動きもより一層、喜々として、はつらつと映る。その中で新2年生を中心に、新3年生も含め印象に残る選手を挙げてみたい。

開会式直後の試合で度肝を抜かれた。捕手として生きてきた私だからこそ、よけいに強烈に映るシーンとなった。0-0の2回2死満塁。神戸国際大付はエース阪上をあきらめ、左腕の楠本晴紀投手(2年)が救援した。

確かに新2年生にとっては酷な場面だ。案の定、楠本はストレートの四球で押し出しを与えた。さすがに緊張を隠せないと感じていたのだが、続く打者大津を1-2と追い込んでから、4球目のサインに首を振った。バッテリーを組むのは先輩捕手で、しかも主将の4番西川。さらに言えば、押し出し四球を与えた直後で、先輩捕手のサインに首を振ったのが驚きだった。

北海対神戸国際大付 10回裏神戸国際大付1死満塁、北海にサヨナラ勝ちし歓喜する神戸国際大付ナイン(撮影・前田充)
北海対神戸国際大付 10回裏神戸国際大付1死満塁、北海にサヨナラ勝ちし歓喜する神戸国際大付ナイン(撮影・前田充)

長くプロで捕手をしてきた。投手には「サインには首を振っていい。根拠をもとに、何を投げたいか自分の考えは持てよ」と言ってきた。プロだから結果がすべて。抑えれば何の問題もない。ただし、それはプロの世界であって、アマチュア野球になると話は違う。

先輩の、それも主将のサインに首を振る。押し出し四球のショックもあるはずなのに、だ。なかなかの肝っ玉だ。そして、変化球で堂々と三振を奪ったところにずぶとさを感じた。

そこからは9回2死までのロングリリーフを見事な内容で抑えた。186センチ、89キロ。サイズもある、心臓も強い。この日自己最速タイ140キロを出した真っすぐもある。しっかり体を鍛えれば、この先がとても楽しみだ。ただし、まだやるべきことはたくさんある。ベースカバー、フィールディングには課題が見えた。

また、二塁手の山里宝内野手(2年)にも非凡なものを感じた。3回2死一塁。北海の左打者木村の一、二塁間への打球を、あらかじめ守備位置を変えて好捕。そして、打球に飛び込んだ一塁手・武本の帰塁に合わせてスナップスロー。こういうところにセンスを感じる。緊張しているはずだが、打球処理だけでなく、仲間の動きを見ながら送球できるのが素晴らしい。

話はそれるが、この場面では投手の楠本が一塁ベースカバーに入るべきで、先述した課題とは、まさにそうした部分。これから実戦を積んで、あらゆる場面で頼れるエースに成長してもらいたい。