侍ジャパン24人の選手が持つ武器やストロングポイントにスポットを当てる連載「侍の宝刀」。新人離れした「肝っ玉」が据わる日本ハム伊藤大海投手(23)は、大舞台でも堂々とした投げっぷりで侍投手陣を支える。

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伊藤の強みは、自分で決めたことを信じてやりきれるところにある。新人合同自主トレ期間中の1月17日。日本ハム栗山監督がブルペン投球を視察した時に「そこを気にして、どうにかなるようじゃダメ。自分のやるべきことの見極めと、それに対してどれだけ集中して取り組めるかが大事」と、言い切った。首脳陣とも話し合いながら組み立てた調整ペースに沿ってシーズンへ向けた準備を進めた。前半戦で7勝。結果が示すように、自分自身を深く理解しているから、自信を持って突き進める。

9日、ロッテ戦でロジンの煙を舞わせながらマウンドに立つ日本ハム伊藤
9日、ロッテ戦でロジンの煙を舞わせながらマウンドに立つ日本ハム伊藤

プロ入りまでも自分を信じて進んだ。駒大苫小牧卒業後に進学した駒大は1年途中で中退し、苫小牧駒大へ再入学した。あくまで、プロ入りを目指しての決断。規定で1年間は公式戦に出場できなかったが、「試合に出られなかった時に自分と体との対話ができるようになった」。明確な目標へ向けて進化の土台を築く1年とした。今ではキャッチボールをするだけで自分の現状を把握できる。どんな場面でも浮足立つことなく、自分を表現できるベースが備わった。

だから、変化を恐れない勇気も持てる。自身6連勝で終えた前半戦。連勝の起点は投球フォームの改善から始まった。5月28日中日戦(札幌ドーム)の2日前に「体全身を使って投げるフォームの方がいいかな」と、ひらめいた。気付いたポイントを体現したのが2段モーション。すぐに取り組み、結果につなげた。変化球も、ほぼ網羅し、フォームは試合中でも微修正するなど器用さも抜群。引き出しの多さは、対応力の高さにもつながっている。

稲葉監督が期待する「マウンドでの気持ちの強さ」は伊藤自身が野球人生の中でコツコツと積み上げ、身に付けてきた最大の武器だ。グラブには「竜驤虎視(りゅうじょうこし)」と刺しゅうしている。「竜のように余裕を持ちながら、目はしっかり勝負しているという、マウンドに立つ人間としてふさわしい言葉かなと入れている」。鍛錬した技術だけでなく、最後は気持ちをボールに乗せ、打者をねじ伏せる。そんな熱い心も、魅力だ。

大学日本代表では守護神を務めたように、どのポジションでも意気に感じて力を発揮できる素養がある。新人の器ではない肝っ玉右腕は、東京オリンピック(五輪)でも堂々とした姿を見せる。【木下大輔】