20年1月からスタートした小谷正勝氏(76)の「小谷の指導論~放浪編」。最終シリーズ第3回は「配球」。

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そんなことは当然だろうと思われるかもしれないが、配球には正解はなく、抑えれば正解になる。ただ、セオリーはある。

配球には、(1)ゲームの状況主体、(2)打者主体、(3)投手主体などがある。今年のゲームを見る限りでは、無いものねだりが多いように感じた。

例えばピンチの時には状況主体か、打者主体の配球になるケースが多いが、ストライクが入らない球を多く使って、カウントを悪くし、最終的にストライクを取りにいって、長打を打たれる場面が散見された。

投手は打ち取るか、打たれるかのどちらかだが、サインが決まったら開き直って、思い切り投げた方がいいだろう。投球は、投手が魂を込めて投げ込むのが一番である。

今のバッテリーは真面目にミーティング通りの投球を目指しているのではないか。型破り、ひらめきの投球も大切で、入り球と打ち取る球さえイメージしておけば、それほど難しく考える必要はないだろう。

ミーティングで指示された攻めは抑える可能性もあるが、ひどい目に遭うこともある。相手もミーティングし弱点を攻めてくるのはわかりきっている。ゆえに、裏をかいてくるのは当たり前で、キツネとタヌキのばかしあいがおこる。

最近のゲームは1回、1回が勝負と言いたくなるほど配球が窮屈に見える。もちろん、初回にKOされれば、2回以降はないことはわかっているが、もう少し状況によっての配球を個人的には期待する。

もっと大切なことは、投手と打者の格を考えての配球である。最近、このことが無視されているような配球を見る。

例えば、球威のある投手が、力が劣る相手を簡単に2球で追い込みながら、明らかに外すようなボールを投げているのを見るとガッカリする。いわゆる無駄球で、力関係から見ればストライクゾーンで勝負しても抑えられるし、球数も減っていく。

それに対し、ここ最近はランナーなしの時に安打を打たせて、餌をまき、ピンチに生かす配球を見る機会がめっきりと減った。

野球は前に飛べばいろんなことが起こるが、四球と本塁打はどうにもならない。打者はホームランになるつぼを持っているが、それを避けるのは投手の仕事。そういう意味で言えば、ホームラン打者にホームランを打たれるのはどうか。

同じような理屈で、点差にもよるのだが、満塁、フルカウントでどうしても日本人の感覚では押し出しを嫌がる傾向がある。仮に押し出しなら1点、本塁打なら4点。どちらを選ぶか。ベンチの指示が大きく左右する。(つづく)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ)1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業専念。11年まで在京セ3球団で投手コーチ。13年からロッテで指導し、17年から19年まで巨人でコーチ。来季からDeNAのコーチングアドバイザー。