欧州のサッカー大国、イタリアには野球にも「セリエA」がある。それどころかセリエCまである。楽天、DeNAで通算3勝の浜矢広大投手(29)は今季から全30チームからなるセリエAのネットゥーノに所属。「助っ人外国人」としてプレーしている。同国の野球事情を聞いた。

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7イニング制の試合は金曜から日曜に行われる。練習は月曜から木曜まで夕方の5時30分開始。浜矢ら外国人選手は住居を提供され、月給も30万円程度出るプロ契約だが「イタリア人にとっては、昼間に別の仕事をしているので社会人野球」。両者が融合したリーグは「クラブチームみたい。趣味という感じではない」という感想だ。連絡で使う言語はイタリア語が中心だが、助っ人に配慮して、SNSでは英語とスペイン語も使われるという。

欧州以外の外国人投手はルールで登板が金曜日に限られるが、プレーのレベルは高い。浜矢はNPBだけでなく、社会人、独立リーグ、メキシカンリーグも経験済み。「メキシコと大差がない。僕の真っすぐをはじき返す能力があった。小柄で小技が多いイメージがあったけど、ドミニカ共和国とか外国人選手も多く、体が大きい」。パワーを生かしたプレーが中心。登板2試合目では7安打を打たれた。「ほとんどが真っすぐ。メキシコと似ていて、全部真っすぐに張って振ってくる」と特徴を語った。

今年からイタリアのセリエA・ネットゥーノに所属する浜矢はベンチでサムアップポーズ
今年からイタリアのセリエA・ネットゥーノに所属する浜矢はベンチでサムアップポーズ

情熱の国、イタリアならではの特色もある。「結構みんな怒りっぽい。打たれたピッチャーが頭を抱えて抱きしめ合ったり。男同士でもあいさつはハグ。チームメートは優しくしてくれる。日本に興味があるようで」。ネットゥーノはラツィオ州ローマ県にある人口約5万人の街。金曜のナイターには数百人が訪れるほど野球が盛んで、歩いていると声を掛けられることもある。普段はパスタなどを自炊しているが、遠征先のケータリングで出るピザはレベルが高いという。

外国人投手である浜矢は、プレーオフが終了する9月中旬までの契約だ。シンガー・ソングライターの妻尾田友梨佳さんと2人の子供を日本に残し、単身赴任だ。目標は「メキシコや日本を目指している。イタリアでいい投球をして注目されれば」。12年にセリエAのボローニャでプレーしたG・G・佐藤は日本のクラブチームを経由して、ロッテでNPBへ復帰している。古くは92年のセ・リーグ打点王、ラリー・シーツ(大洋)も前年はイタリアでプレーしていた。

来年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に代表チームが出場する。野茂英雄とドジャースでバッテリーを組んでいたマイク・ピアザ監督が率い、米大リーグ・メッツの救援右腕オッタビノ投手らが出場を表明している。国内組の選手にとっても、世界への実力アピールの場となりそうだ。【斎藤直樹】

◆浜矢広大(はまや・こうだい)1993年(平5)2月27日生まれ。奈良県十津川村出身。日高高中津分校からホンダ鈴鹿を経て13年ドラフト3位で楽天入団。19年熊原とのトレードでDeNA移籍。20年退団。21年BCリーグ・茨城、21年メキシカンリーグ・ベラクルス移籍。NPB通算40試合、3勝1敗、防御率7・25。185センチ、90キロ。左投げ左打ち。家族は友梨佳夫人と2男。