故郷の兵庫・多可町の後輩たちへ、思いのこもった巨人大勢投手(23)の色紙とメッセージを携えて、私は新幹線に乗り込んだ。ワイルドな少年時代を過ごした最速159キロ右腕の原点を見に行こう。
目的地は母校・多可町立八千代中。甲子園で行われる阪神3連戦前日の7月11日だった。東京から新幹線と高速バス、タクシーを乗り継いで約5時間。大勢が青春を過ごした八千代中についた。すぐ横に川が流れ、校庭は広くて立派。私が通っていた故郷の東京・あきる野市の中学校とよく似た自然の豊かさに懐かしさを感じた。
最上階となる3階の教室に向かうと、すでに机をコの字形に並べて3年の生徒会の生徒9人が待っていた。まるで先生のような状態に、気恥ずかしさを感じながらも話を聞いた。大勢の今の活躍をどう見ているのか。初出場が決まった球宴ではどんな投球を見たいか。伝えたいことは。そしてそれぞれの夢は-。
照れながらも、はっきりと発表してくれた。遠い親戚という翁田一樹さんは「ドラフトから気にして見てました。親戚一同応援してます!」。同じ少年野球の八千代少年野球クラブ出身の伊藤岳さんは「まさかこの町からプロになるなんて…。大勢投手のような立派な人間になりたい」。吹奏楽部の繁縄綾花さんは「人の心を動かすことができて尊敬しています。私も吹奏楽コンクールで金賞をとれるように頑張ります」。インスタグラムでこっそり応援メッセージを送る生徒も。最後に大勢の「頑張れ」「楽しく」のメッセージ入りのサイン色紙を手渡すと、感激しきりで大喜びしてくれた。
ここからプロの世界に…。テレビ画面越しに、バリバリ活躍する同郷のヒーローの姿に、勇気をもらっていた。野球ファンが注目する球宴でも、ひときわまばゆい活躍を-。そんな矢先に予期せぬ出来事が待っていた。【小早川宗一郎】
(つづく)