運命のドラフト会議が明日26日に迫った。「指名を待つ男たち」の第2回テーマは「地方に現れた異色選手」。

10年間もプロが出ていない大学リーグの長距離砲。社会人3年間で1試合登板ながら、独立リーグ移籍1年目で159キロをたたき出した剛腕。スケール感では「中央」にひけをとらない2人を紹介する。

ドラフトファイル:村田怜音
ドラフトファイル:村田怜音

「お伊勢さん」と親しまれる伊勢神宮のお膝もと。三重から下克上を狙う超大型スラッガーは4年間、この日のために静かにツメを研いできた。身長196センチ、体重110キロ。文字通り頭1つ抜けた皇学館大・村田怜音(れおん)内野手は、ゆったりと右打席に入り、力感なくバットを振り抜く。強振しなくても、とらえた打球はピンポン球と化して飛んでいく。ダイムスタジアム伊勢の中堅左に消えた推定150メートル弾も語り草だ。大学通算本塁打は25本。チーム打撃ができる技術もついてきた。「伊勢の怪物」のもとにはこの1年、スカウトが足しげく訪れた。

「伊勢神宮から明治神宮へ」が部の合言葉。今秋、三重大学リーグ10連覇を達成。三重では圧倒的な強さを誇るが、その後の代表決定戦のカベが厚く、全国大会からは8年遠ざかる。三重リーグからは12年に楽天に2位指名された三重中京大(13年閉学)の則本昂大以来、10年も指名選手が出ていない。伊勢市と隣接する松阪市出身の村田は、そんな環境のリーグと分かっていたが「あまり有名じゃない学校で活躍して、強いところを倒したかった」と皇学館大を選んだ。

皇学館大・村田怜音
皇学館大・村田怜音

目を引く長身は、186センチある父ゆずり。「牛乳も特に好きではないし、昔から食べて、遊んで、寝てを繰り返してきただけなんですけどね」。徳和小6年時には170センチ超。久保中野球部では全国大会にも出場。卒業するころには190センチに達し、身長の伸びとともに頭角を現してきた。

県を代表する強豪・三重高のすぐ近くで生まれ育ったが、高校は公立の相可(おうか)へ。その時も「強い学校を倒したい」が理由だった。高校3年間で身長は195センチまで伸びた。身体能力は突出しており、ボートや柔道などの関係者からも注目された。

高校通算は25本塁打。うち20本は最後4カ月半で記録した。16強に進んだ最後の三重大会も3本塁打。「覚醒」がもっと早ければ東京6大学や東都も黙っていなかったかもしれない。

プロ志望は昔から強い。小学校、中学校で同級生だった中日岡林勇希は親友で「岡林にあこがれています。同じ舞台で一緒に戦いたい」とモチベーションにしてきた。座右の銘は「積土成山(せきどせいざん)」。コツコツと土を積んできた山は、まだまだ高くなると信じている。【柏原誠】