9月29日から10月4日まで福井国体高校野球取材のため福井県に出張した。大会は台風のため短縮され準決勝、決勝が行われず。4強入りした浦和学院(埼玉)金足農(秋田)近江(滋賀)大阪桐蔭の4校が「優勝」(1位)を決めた。

常葉大菊川対金足農 試合前、マウンド上で「侍ポーズ」を披露する金足農・吉田(撮影・垰建太)
常葉大菊川対金足農 試合前、マウンド上で「侍ポーズ」を披露する金足農・吉田(撮影・垰建太)

【9月29日】

昼過ぎまで都内の品川プリンスホテルで「eBASEBALL eドラフト会議」を速報。取材を終え品川駅から新幹線で米原へ。米原から特急「しらさぎ」に乗り換え福井に入った。駅前で巨大な恐竜が出迎えてくれた。

ところが宿舎に到着してネットをチェックすると台風24号接近の影響で翌30日の1回戦4試合すべて中止が決まっていた。ガックリ。福井駅ナカのスーパーで買った弁当を食べ、風呂に入って寝た。

福井駅前の恐竜
福井駅前の恐竜

【9月30日】

午前7時起床。台風で大雨かと思いきや、福井は曇り。そこで中止にはなったが会場となる福井県営球場の下見に。駅前からバスで約20分。球場は運動公園内にあり、敷地内のテニスコートでは少年の部(高校生)の試合が行われていた。

球場に到着。この球場は20年以上前に確かフレッシュ球宴の取材で来たはずだがすでに記憶から消えている。高野連の先生にお願いして記者席をチェック。ここが狭いと明日からは席の争奪戦になる。しかし、広く十分なスペースだった。まずはひと安心。

ここで大阪本社から福井入りしているはずのISOちゃん(記者)に連絡。現地休暇を取ったらしく「これから恐竜を見てきます」とのこと。福井県では1980年代に恐竜の歯が見つかり、その後も恐竜の化石が発見された。これがきっかけで「恐竜王国」となり、勝山市に「福井県立恐竜博物館」が開館。福井駅前にも巨大な恐竜の像がある。

恐竜はISOちゃんに任せて、こちらはテニスを見物。テニスの試合を間近で見るのは初めて。迫力あるプレーを堪能した。

夕方までには風雨が激しくなるとのことで昼過ぎに引き揚げた。西武デパートの地下で総菜を買い込んでホテルへ。毎週欠かさず見ている大河ドラマ「西郷どん」を見ようと思ったが、台風で休止。翌日に備え風呂に入って寝た。

【10月1日】

午前5時半に起床。小雨が降っていた。駅前から6時20分の始発バスで球場へ。午前7時前に到着した。切符売り場の前には傘をさしたファンが長蛇の列。取材受付をすると「雨でグラウンド状態が悪く第1試合は正午開始になりそう」とのこと。結局、正午から大阪桐蔭-下関国際、済美-高岡商の2試合のみが行われることになった。

第1試合は大阪桐蔭が根尾昂選手の投打に渡る活躍で2-0で下関国際を破った。試合後、下関国際を取材。プロ志望届を提出したエース鶴田投手は当初進学予定だったが、甲子園後「育成でもいいのでプロに行きたい」と気持ちが変わったという。夏の甲子園で8強入りした最速147キロ右腕。果たして指名はあるのか。25日のドラフト会議に注目だ。

下関国際対大阪桐蔭 1回表下関国際1死二、三塁、鶴田に投げ込む大阪桐蔭先発の根尾(撮影・垰建太)
下関国際対大阪桐蔭 1回表下関国際1死二、三塁、鶴田に投げ込む大阪桐蔭先発の根尾(撮影・垰建太)

【10月2日】

午前8時半から4試合。午前6時過ぎにタクシーで球場へ。この日は第4試合に吉田輝星投手の金足農が登場とあってファンの出足も早かった。記者席も前日より人が増えた。東北総局からT記者、対戦相手の常葉大菊川担当の静岡支局・S記者も合流し賑やかになった。17時過ぎ、第4試合が始まった。今夏、甲子園取材には行かなかったので「生・吉田輝星」を見るのは初めて。プレーボール直前にマウンドで行う「侍ポーズ」に注目すると期待通りやってくれた。隣に座っていたT記者が激写。すぐに速報にアップした。

試合は7-0で金足農が7回コールド勝ちした。吉田投手は5回を投げ無失点、毎回の11三振を奪った。2回には自己最速を2キロ更新する152キロをマークした。

初めて生で見た吉田投手の印象は◎だった。投球もさることながら、目を奪われたのが走塁。走る姿が格好良い。もう20年以上前に横浜高の松坂を見たときもそうだった。本塁打を放ちベースを1周する姿がとにかく格好良かった。その時の松坂がフラッシュバックするほどインパクトがあった。降板後に入った右翼でもスーパーキャッチ。常々プロ野球選手とは「何をやらせてもうまい選手」だと思っている。打つ、投げる、走る、守る。良い選手というのは何をやっても上手い。イチローや松坂がそうだし、エンゼルス大谷翔平も。そんな選手に吉田選手もなってほしい。

試合後、吉田投手の取材はT記者に任せて、152キロ直球で見逃し三振に倒れた常葉大菊川の漢人投手を取材した。

「すごい。低めに来たと思ったのに(伸びて)ベルト付近でミットに入っていた。振り出そうと思ったんですがバットが出ませんでした。こんなボールを打てる高校生はいないと思います。それと普通、球速を落とすと球質も落ちるはずなんですが吉田君は球質が落ちない。これはすごい。僕もこういう投手を目指したいです」

吉田投手は翌日秋田に戻り10日にプロ志望届を提出。記者会見を開いた。運命のドラフト会議は25日に行われる。

【10月3日】

第1試合は大阪桐蔭が甲子園の再戦となった済美を再び破り「優勝」を決めた。

試合後、ISOちゃんに頼まれ大阪桐蔭の柿木、横川両投手を取材。2人とも「プロ志望届を出します」と宣言。柿木投手は「プロ野球選手を目指すために大阪桐蔭に入りました。プロでも成長して目標にされる投手になりたい。貪欲にやっていきたい」と話してくれた。一方、敗れた済美は昨年の国体、今夏甲子園と大阪桐蔭と対戦しいずれも敗れた。9回に3ランを放って一矢を報いた池内主将は「リベンジできなかったが、最後に1本打てて悔いはありません」と話した。

大阪桐蔭の強さについて「高い壁のひと言。ミスが少ないし守備、走塁、すべての面で意識が高い。あと少しの差なんですが、後輩たちには大阪桐蔭さんを倒せるよう頑張ってほしいです」と話した。打倒大阪桐蔭は後輩に託し、自身は駒大に進学し大学日本一を目指すという。

【10月4日】

福井から帰京。といっても復路も米原経由では面白くない。金沢回りで帰ることを決めた。さらにせっかくなので能見根上(のみねあがり)で途中下車して「松井秀喜ベースボール・ミュージアム」を見学することに決めた。

福井駅から在来線で能見根上へ。しかし、バスが2時間待たないとなかった。やむを得ずタクシーでミュージアムへ。運転手さんがおしゃべり好きで途中、松井選手が卒業した小学校、中学校の前を通ってくれた。さらに「毎日ではないが、たまに(松井選手の)お母さんが顔を出しますよ」と教えてくれた。

10分ほどで到着。立派な博物館だった。1級建築士の資格を持つ松井選手のお兄さんが設計したと運転手さんが言っていた。

入館料400円を払って中に入った。中学時代からのユニホーム、数え切れない表彰盾、トロフィーが展示されていた。さらには旧ヤンキースタジアムで松井選手が使っていた実物のロッカー。ヤンキースタジアムの右翼フェンスや客席の一部まであった。説明を読むとニューヨークから船で神戸まで運んだのだそうだ。

タクシーの運転手さんには1時間後に迎えに来てくださいとお願いしてあった。しかし1時間では足りないほど見応えのある博物館だった。

時計を気にしつつ展示を見終え、お土産売り場へ。当初数人いた来館者は私1人になっていた。

お土産を買おうと受付のお姉さんと雑談をしていると、松井選手のお母さん、さえ子さんが顔を出してくれた。20年以上前、巨人担当で松井選手を取材したことはあるが、お母さんとは初対面。「初めまして」と挨拶をして、博物館の展示に日刊スポーツの紙面を何枚か使ってくださっていることのお礼。松井選手に取材で世話になったことのお礼などして、お薦めのお土産を聞いた。

薦めてくれたのは「松井秀喜スウィートチョコサンド」。お土産人気NO・1だそうで2箱購入。さらに「松井家秘伝のカレー」(レトルト)も買った。

するとタクシーの運転手さんが迎えに。もう少しいたかったがお母さんに別れの挨拶。最後に「そろそろ息子さんの監督姿が見たいですね」と話すと「まだまだヤンキースで修行中ですから」とのお答え。折しも前日3日夜に巨人高橋由伸監督の辞任が発表されたばかり。後任は原辰徳前監督の再登板とのことで「松井秀喜監督」の誕生はもうしばらくお預けのようだ。

タクシーで駅に向かい在来線で金沢駅へ。金沢駅は多くの人でごった返していた。駅構内の「8番ラーメン」で野菜ラーメン(塩)を食べ、新幹線で帰京した。

松井秀喜ベースボールミュージアム
松井秀喜ベースボールミュージアム
博物館でお土産に買ったカレーとお菓子
博物館でお土産に買ったカレーとお菓子