平成は甚大な自然災害が続いた時代でもあった。東日本大震災から8年を迎えるにあたり「災害と野球」を取り上げる。再び東日本大震災級の地震が起きた時、首都圏の球場はどう対応するのか。各球場の防災対策を取材した。

 ◇  ◇  ◇

【横浜スタジアム】15年4月、球場がある横浜公園は、市が定める広域避難場所の指定を解除された。理由は津波だ。海岸から約600メートルに位置する。江戸時代初期に大きな津波被害をもたらした慶長地震を基準に検討したところ、公園一帯も水につかると判断された。そのため、避難場所には指定できなくなった。

ただし、指定解除が即「球場は危険」を意味するわけではない。横浜市の担当者は「津波が来た時は垂直避難が基本。球場など高い方へ逃げた方が安全と言える」と強調する。球場からもっとも近い避難場所でも2キロほど離れている。観戦客は土地勘がない人も多い。天気や渋滞状況によっては、避難にかなりの時間を要する危険がある。球場にとどまった方が安全かも知れない。

横浜市中区の防災計画(14年6月)によると、慶長型地震の場合、横浜公園内の浸水は最大1・2~2メートル(公道に面した部分)だが、球場部分は地盤が高いため、浸水は50センチ以下と予想される。球場担当者は「待機させるか、避難させるかは、警察、消防、横浜市と協議し判断することになる」と話した。耐震診断・調査は11年より前から進めており、既に現行法上の基準をクリアしている。

【ZOZOマリン】海に近接しており、横浜スタジアム同様、避難場所には指定されていない。やはり津波対策が避けて通れないが、防潮堤といった施設面での対策は簡単にできるものでもない。現状では、災害発生時の対策に重点を置く。ロッテ球団はマニュアルを定め、津波発生に伴う被害状況を想定した防災訓練を行っている。

【神宮球場】大正末期に造られ、100年近い歴史を持つが、東日本大震災では大きな被害はなかった。13年11月からは、オフ期間を利用した耐震補強工事をスタート。第3期(15年秋~16年春)にわたる工事を終了し、耐震基準に適合した建築物として東京都から認められた。東日本大震災以降は防災マニュアルをより細かく改訂。観客の避難動線などを再確認し、職員に周知徹底している。なお、明治神宮外苑全体では、軟式球場が広域避難場所に指定されている。

【東京ドーム】スタジアムを含む東京ドームシティは都心に位置する大規模レジャー施設で、17年度は3800万人超が訪れた。都の広域避難場所に指定されており、株式会社東京ドームは災害時には一時避難者や帰宅困難者の安全維持を最優先課題としている。専門チームを含む災害対策本部を組織。スタジアム、ホテル、遊園地などシティ全体で年間約2000回にも及ぶ防災・安全訓練を行い、春と秋の総合防災訓練には地元消防や警察、周辺住民も参加している。また、文京区と災害時の相互協力に関する協定を結び、地元とのつながりを重視している。【古川真弥】