同一リーグのチームと初対決。阪神のドラ1馬場皐輔が8月12日のDeNA戦に先発。無残にもプロの洗礼を浴びてKOされた。試合前から思い描いていたピッチング内容とは程遠かったはず。ストライクが先行する思い切りのいいピッチングはできなかった。ストレートを武器にした真っ向勝負ができなかった。まだ若い。経験も浅い。現状を力不足の一言で決めつけてしまうのは酷。己の持てる力を発揮できなかったと見たが、不足していたのは力のみにあらず、100%の力を出し切れるだけの確固たる“自信”までは身についていなかったからだ。ショックから2週間強、馬場が鳴尾浜のマウンドに上がった。

自信とは--。勝負の世界で生き抜いていくためには一番大事なもの。辞書を引いてみると「自分の能力、価値を確信すること」と明記されている。確かに己の能力に確信が持てるなら実力は本物。桧舞台での活躍は約束されたも同然。自信はプロ野球の世界だけではなく、あらゆる分野で求められているものだが、厄介なことにこの自信、簡単に身につく代物ではない。山あり谷あり。険しい道程を乗り越えないことには自分のものにならない。

厳しい世界だ。深い谷間に落ち込んだ馬場はKOされた翌日には登録を抹消されて鳴尾浜の合宿所へ帰寮していた。これが勝負の世界の掟。まさに弱肉強食のジャングルだ。首脳陣へのアピールに失敗した。2回と3分の2で4失点。おまけに投手にまでストレートの四球を与える始末。マイナスイメージを与えた感が強い。払拭するしかない。やはり自信だ。自信を得るためには一つ一つのプレーに集中して、貪欲に吸収していくことだ。

出直しだ。8月28日、鳴尾浜球場での中日戦(ウエスタン)はあのDeNA戦以来の登板。「1軍で情けないピッチングをしていますので、この試合はすごく大事なマウンドだと思っていました」と馬場。気持ちを新たに反省を含めたピッチングは、矢野監督の目にはどう映ったか「今日の内容でも1軍で勝てるとは思うが、味方に点を取ってもらい、勝たせてもらったというピッチングになる」の手厳しい発言の意味は「自分の力で勝たせたんだ、と言えるぐらいのスケールの大きいピッチャーを目指していかないと」である。要するに“自信”を持てということ。なぜなら、自慢する発言は自信がないとできないからだ。

今回の内容は7回6安打2失点、6三振1四球で勝利投手になった。あれから心技体の向上を目指して野球に取り組んできたが、ピッチングの中身は前回のDeNA戦と大きく変わることはなかった。ネット裏から見ていて、1軍のバッターなら「見切っている」とか「あのボール球には手は出さん」という内容に加え「ファームだから助かった」球もいくつかあった。課題は「ストレートの精度を上げること」に置いている馬場に、矢野監督は「やはりピッチングを組み立てる軸となるのはストレートですからね。これから精度を上げていくためには、体の切れがよくなるようにもっとシャープな動きを取り入れたトレーニングをするのも1つの方法」だと指摘した。

自信だ。即、備わるものではない。一つ一つのプレー、経験を幾度となく積んで培っていくものだが、自信に繋がるプレーは練習で、実戦でその都度出てくる。集中することだ。集中していないと気がつかずに見過ごしてしまう恐れがある。本気でストレートに取り組む馬場「真っすぐで押していけるようにしたい。真っすぐの強みを持てる球を投げられるように、挑戦を続けていきたい」一貫性を持った挑戦は必ず身につくはずだ。

並の自信は誰もが持っている。殻を破れ。本物の自信に繋がるのは1軍での勝ち星。相手各チームの主力を抑える。自分で納得のいくピッチング等々だが、馬場にとって、ストレートが自分の納得する球になった時が「自分の能力、価値を確信する」時だろう。少しでも早く本物の域に達してほしいものだ。【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)

DeNA戦でソト(後方)に勝ち越しの本塁打を打たれた阪神先発の馬場皐輔(2018年8月12日撮影)
DeNA戦でソト(後方)に勝ち越しの本塁打を打たれた阪神先発の馬場皐輔(2018年8月12日撮影)