日本ハムから大リーグ入りを目指すことを正式に表明した大谷翔平のニュースに触れて、好対照な2人の元有名選手の口から出た「同じ言葉」を思い出していました。

 2人とは昨季限りで現役を引退した黒田博樹氏と「近鉄の主砲」というイメージがピッタリくる中村紀洋氏です。

 それぞれ細かい数字はともかく、黒田氏が大リーグのドジャース、ヤンキースというナショナル、アメリカンの両リーグを代表する名門球団で大活躍したのは言うまでもありません。他方、中村氏は米国で輝けませんでした。

 中村氏は02年オフにFAでメッツ入団が決まりかけながら破談に。のちにドジャースとマイナー契約を結んで渡米しましたが、メジャーでは05年に17試合に出ただけ。「いてまえ打線」で鍛えた豪快な打撃を米国で発揮することは、ついにできなかったのです。

 その2人が口にした同じ言葉とは何か。

 ズバリ「メジャーでは契約がモノを言う」ということでした。米国が契約社会というのはよく聞きますが、大リーグなどのプロスポーツもその傾向が極めて強い。

 黒田氏にちらりと聞いたことで「ふ~ん」とうなったのはこういうことです。

 メジャーではゼネラルマネジャー、いわゆるGMが大きな権限を持っているのは知られますが、その権限は選手起用法にも関わっているということです。

 日本では戦術、選手起用も含めた試合の現場では監督がすべてを仕切っています。まれにそうでない場合もあるそうですが、表向きはそうなっています。

 これに比べ、特に選手起用に関してメジャーではGMの意見が大きい。極端に言えば試合出場数などによって年俸の出来高払いが変わってくるとき、GMと監督は綿密に連絡を取って、調整する場合すらあるというのです。

 もう10年以上も前ですが中村氏と話した内容でも、そういう話が出たのを覚えています。本当はもう少し複雑なのですが、要するにマイナー契約の選手とメジャー契約の選手では、実力以外で扱いが大きく違うということです。

 同じポジションでその両者で比較された場合、成績とは別に契約の不利な方が負けます。そのため選手サイドとしては、契約を結ぶときにはよほどの注意が必要。代理人があれだけ活躍するのも理解できるということです。

 今回の大谷も、修正された現行のポスティングシステムでは、当面はメジャーの代表格の選手たちに比べれば、大きな契約とはいかないようです。それでも数年後をにらんで「米国に行きたい」というだけではなく、日本人選手の代表として堂々とした待遇で渡米してほしいと強く思います。