宜野座で会った野球解説者の村上隆行氏がこんなことを言っていました。打撃ケージ裏で新加入のロサリオに顔を合わせると「おお! オキナワ! オキナワ!」と言いながら握手を求めてきたそう。

 オキナワ? 沖縄が気に入ったということか? そう思いながら握手をし、通訳を入れて話したところ、真相が明らかになりました。

 「オキナワ」ではなく「おおきに」と言いたかったようなのです。「誰かに関西弁の『ありがとう』だ、と教えてもらったみたいで。とにかく単語から日本語を一生懸命に覚えようとしている。こういう姿勢はいいですね」(村上氏)。オキナワとおおきに。確かに似ているかも…。

 言葉の難しさはともかく、まさに村上氏の言う通りです。第1クールでロサリオの様子を見ていると本当に明るく積極的です。打撃練習で柵越えを放って、客席から拍手がわき起こると帽子を取って振り回して応えてみたり、守備練習では捕手の飛球に突っ込んでみたり。野球を楽しんでいる様子が見て取れます。

 亡くなった星野仙一さんのしぐさで覚えているものがあります。自分の胸元をドンッとたたいて「あいつはココがいいからな!」というもの。ココ。つまりハートです。特に外国人選手に対し、そういう独特のポーズを取っていたことが思い出されます。

 ロサリオがどんな闘争心を持っているのか。それは実戦が始まってみないと分かりませんが、少なくとも異文化、新しい環境に溶け込もうとする前向きな気持ちを持っていることは確かでしょう。

 そんなロサリオに対し、金本監督が仕掛けたドッキリの話を虎番記者が書いていました。ドリス、マテオを巻き込んで実力行使すら辞さない恐ろしい指揮官を演出したとのこと。ジョークの趣味がいいのかどうかは分かりませんが思わず笑ってしまいました。

 「外国人選手に遠慮はするな。配慮はする」。そう言ったのも星野さんでした。3年目を迎えた金本監督も指揮官として成長を見せているのかもしれません。

 この日、3月10日に中日を相手に甲子園で行われる星野仙一さんの「追悼試合」で、特別ユニホームを着用することが発表されました。監督、コーチ、選手が背番号「77」を着用して戦うそう。こういう試みは大好きです。

 金本監督が着るタテジマの背中に躍動する「77番」。なんとなくウルッときてしまいます。闘将の熱い思いと、技術をしっかり継承していってほしい。そして阪神を勝たせてくれ。そんなことを考えています。【編集委員・高原寿夫】