パ・リーグが大変なことになっている。オリックス、ソフトバンク、西武のガチンコ優勝争い。ゲーム差はあってないようなもの。ここまでの激戦、それも3球団が入り乱れての戦いは久々だ。

9月11日、オリックスとソフトバンクの直接対戦をテレビ観戦した。いきなりソフトバンクが初回、3点を先制。3回にも1点を加え、ソフトバンクのペースで進んでいく。だが、そこからだ。オリックスがグッと踏ん張る。失点を食い止め、チームとして反撃に出る。

テレビでベンチの様子が映し出される。オリックスの選手は、みんな、前のめりになっていた。4点差、まったく沈んではいない。これが優勝争いの空気感。目の前のことに、すべてが集中している。これがビンビン伝わってきた。

すると6回裏に2点を返した。ベンチの中で監督の中嶋が鼓舞する。いつもはないアクション。たまに出すから影響が出る。8回に1点を返し、9回も攻めたが1点差届かず。それでも緊張感にあふれたゲームだったし、何より負けていても、一塁ベンチは諦めていなかった。

今シーズンのオリックスは苦労の連続だった。コロナ禍、故障者続出…。阪神ほどではなかったが、誤算続きの中盤までだった。しかし、そこにはチャンピオンの意地と自信があった。ジワリジワリと借金を返済し、ついにトップに立った(この日の負けで1日天下だったが)。やはり底力があった。

パ・リーグで関西の雄が刺激ある戦いを続けているのとは対照的に、セ・リーグの阪神はどうなっているのだ。CS争いの正念場で、横浜で緩んだ大敗を続けた。甲子園に戻った中日戦で連敗を止めたが、9月11日現在、借金がまだ「3」ある。残り11試合で5割に戻すには最低7勝4敗が必要で、決して楽な数字とは言えない。

この残り試合、それは監督、矢野の退任カウントダウンを意味する。感傷的になるところだが、ネットではその采配がまたまた批判を浴びている。チームに漂う諦めムード、執念を感じない起用法…。これらを払拭(ふっしょく)するには、何としてもクライマックスシリーズ(CS)出場を死守するしかない。

5割に届かずにCSへ、というのは大いに不満が沸く。しかし、矢野の監督最後だ。有終の美を飾ってもらいたい…と思うファンは少なくない。そのためにはベンチがオリックスのように前のめりになっていくしかない。

今シーズン前、関西のファンには望みがあった。それは1964年(昭和39年)、阪神-南海以来となる日本シリーズでの関西ダービーだ。オリックスは連覇の可能性十分だし、阪神だって総合力はリーグナンバーワンと評価されていた。それがふたを開ければともに大きく出遅れ。関西ダービーの夢は早々と消えたかと思われたが、2球団は中盤から踏ん張った。

オリックスのCS進出はほぼほぼ当確か。となれば、関西ダービーの実現には阪神の頑張りが絶対条件になる。仮に逆転され、4位にでもなれば、その時点から阪神の話題はガラリと切り替わる。いよいよ新監督決定へ、ゴングが鳴る。それを延ばし、「野球」を見せるためにも阪神は絶対に「3位死守」。矢野の集大成を日本シリーズ進出、そしてオリックスとの関西ダービーに。阪神頑張れ、オリックスも頑張れ! もう少し、関西のファンを熱くしてほしい。(敬称略)

阪神対中日 中日に勝利し、阪神矢野監督(左から2人目)らはスタンドのファンにあいさつする(撮影・上山淳一)
阪神対中日 中日に勝利し、阪神矢野監督(左から2人目)らはスタンドのファンにあいさつする(撮影・上山淳一)