ファン感謝デーが終わり、2022年の行事は終了。ここから2カ月、ネタに困る日々が来る。

岡田新監督で大にぎわいの阪神だが、さすがに今後の2カ月は静かだろう。そんな時、離れたところから、阪神絡みの話題が届いた。それは広島から。新井新監督が来季のことを聞かれ、意識する球団に阪神を挙げたというもの。そらそうよ(岡田風ですみません)。新井も阪神OB。その中で岡田との関わりは浅くはない。

「あの岡田さんと対戦する…って、何か不思議な気持ち」的な発言があったとか。2008年、ふるさとの広島を涙で去り、FAで阪神にやってきた。金本とのコンビは人気を博し、すぐにタイガースの人気者になった。

ところがファンのみなさんはご存じの通り、新井は肝心なところでチームを離れている。独走状態のシーズン途中、北京五輪に参加して、そこで腰を骨折。チームに合流するも戦力に加われず、チームはV逸。新井は責任を感じ、以来、ずっとモヤモヤした気持ちでいた。

岡田はそのシーズン終了後、責任を取り監督を辞任。V逸の原因のすべてではないが、新井は岡田に頭を下げたかった。2009年の春。沖縄キャンプを視察した岡田は新井に誘われた。「食事に付き合ってください」。2人は沖縄でグラスを合わせた。

「監督、すみませんでした。大事なところで故障して…」。ずっと引きずっていた新井に岡田は声をかけた。「もう終わったこと。気にするな。何も思ってないわ」。

そんな関係の2人が2023年シーズン、監督という立場でぶつかる。それを岡田に聞いてみた。「新井監督? そんなん、立場的に他のチームのことを言えるわけがないやろ」と言いつつ、新井にはやはり特別な思いを隠せなかった。

「エエ男やんか。気持ちがやさしいというか、みんなに好かれる人間よ」。ただ監督としてはどうだろうか? 岡田は新井のやさしさを気にしていた。「まあ監督になったんやから、やさしさをどう変えていくか。それは新井もわかっているやろな」。時として冷徹で、非情にならねばならない監督業。大先輩の言葉は新井に届くか。

新井は意外と若かった。もっと年齢がいっていると思っていたが現在45歳。これは球界最年少監督であり、岡田とは20歳差。最年長と最年少の監督勝負。これは見ものだが、他にも岡田と因縁のある監督が…。巨人の原とは学生時代からの縁で、今回、再び、TGとして激突するし、DeNAの三浦とは浅からぬ縁が。三浦の父親が岡田の後援会「岡田会」のメンバーで、三浦は幼い時から顔見知りだった。

かつて岡田が村山実とキャッチボールしたと同じように、三浦少年は岡田と野球に興じ、それから40年後、互いに監督として戦うのだから不思議な巡り合わせではないか。

中日の立浪とはさすがに接点はないと思っていたら、「昔、同じスポーツメーカーのアドバイザーやったんで、オフに顔を合わせていたわ。野球を知っているという印象が強く残っている」と振り返る。

長い間、野球界に携わっていると、何かしら縁や関わりが生まれる。ただヤクルトの高津とは接点はない。2023年こそ、高津との争いになるのか。2年連続のリーグ優勝チーム。最大のターゲットはヤクルトとなる。評論家として、ヤクルトの強さを目に焼き付けた。そこで岡田なりのヤクルト撃破法を見つけているに違いない。

人生いろいろ、監督もいろいろ…。最年長監督は確実に若さを取り戻した。原、新井、三浦、立浪、そして高津。それぞれの顔を思い浮かべながら、岡田は静かなオフに入る。しかし、頭の中は巡っている。「アレ」のために、ここから2カ月、岡田流の戦略を練る。「監督力勝負」は望むところ。ホンマ、楽しみが膨らむ。(敬称略)【内匠宏幸】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「かわいさ余って」)