<イースタンリーグ:巨人4-3DeNA>◇20日◇ジャイアンツ球場

2軍の現状をリポートする日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(62)が巨人のファームを取材した。1軍は好調な戦いを見せているが、長いペナントレースを考える時、2軍の充実は1軍のリスク管理と分けることができない。まだ春先の2軍戦を見ながら、個々の選手の動きに違いを感じた。

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盤石な戦いという言葉があるが、それは表面上のものだけでは計れない。プロ野球の公式戦こそ、先を見据え、チームの弱点を補完する先手先手の手当てが必要になる。1軍だけの布陣ではなく、2軍を含めた全体の戦力として、来るべきリスクに備えることが必要になる。

まだ4月。シーズンは始まったばかりだが、この日の巨人のファームに限っていえば、まだまだ課題は多くありそうな印象を受けた。2軍で育成した選手がチャンスをつかみ、1軍で成長する。育てる側面からいえば重要なことだ。また、故障や不振によって1軍の戦力にほころびが出た時、そのピースを埋める。これも2軍の果たす役割だ。

そういう観点から、この日のDeNA戦を見ると、1軍クラスの選手に元気がないな、と感じた。松原は失策で出塁しながらけん制でアウト。ウィーラーは自分のバッティングになってないスイング。期待の秋広もいい当たりはしているが、ショートライナーと中飛で結果が出ていない。

ヒットにつながらない、求められるプレーができない。そういうことも当然あるわけで、それを2軍にいることによるモチベーション低下と、簡単にひとくくりにはしたくない。むしろ、松原やウィーラーなど1軍クラスの選手にすれば、もどかしい気持ちも理解できる。野球はメンタルも大きく影響する。こうした状態をいかにして上げていくか。その調整力も選手の欠かせない資質だ。

一方で、菊田や広岡は「自分たちはアピールしなくてはいけない」と理解しているのが、見ているこちらに伝わる。投手によく声をかけ、緊張感を持続しながら試合に集中していた。こうした状態が続き結果が伴えば、1軍の内野陣でアクシデントがあった際、声がかかるチャンスは広がる。

1軍は白星が先行しており、先発投手陣も安定している。投打がうまくかみ合っているように感じるかもしれないが、中田が19日の広島戦で8番を打っていたように、理想の打順が組めない実情がある。現実的には中田、中島で一塁を競わせることになるのだが、例えば、ここに秋広が割って入ることも選択肢としておかしくはない。また、岸田が充実していれば、捕手として岸田、一塁に大城という考え方も出てくる。

特に秋広はサイズがあり、一塁手として長い手足は大きな的となる。内野手も送球しやすくなる。一塁手中田の守備力は高いレベルにあるが、そこに挑むものを見せてほしい。何よりも秋広は打力が期待されている。体力強化と併せ、どんどん1軍へのチャンスをつかんでほしいタイミングだ。

今季は吉川がここまで故障もなく、攻守で好調を維持している。坂本、岡本和はコンディションを崩して戦列を離れたことはあるが、今のところは大事に至っていない。丸も含めチームの骨格はしっかりしている。ここで、2軍もリスク管理を怠らなければ、巨人の選手層の厚さは大きなアドバンテージになる。

2軍には若手育成、1軍への戦力供給という柱がある。こうして2軍の試合を見ると、特に巨人についていえば1軍のチーム事情と密接につながっているなと感じる。(日刊スポーツ評論家)