<イースタンリーグ:DeNA6-1巨人>◇27日◇横須賀

2軍戦を中心に取材を続ける田村藤夫氏(62)が、調整登板した巨人の新外国人左腕イアン・クロール投手(31)に着目した。来日初登板の20日、ヤクルトの主砲・村上宗隆に3ランを浴びた。29日再開の後半戦で、果たして巨人の救世主になれるのか。

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コロナ禍中の巨人は非常事態にある。試合に出られる選手でやりくりしていくしかないなかで、新外国人クロールへの期待は大きい。初登板では2四死球、村上にも1発を浴びてしまったが、来日してまだ6日目だったので、割り引く必要があるだろう。

3回に2番手で登板し、1イニングを11球、3人で片付けた。東妻純平(右打ち)を空振り三振、大橋武尊(左打ち)を遊ゴロ、梶原昂希(左打ち)を三ゴロに仕留めた。

まずコントロールがいい。この日の最高球速は149キロで、球種もツーシーム、カットボール、スライダー、チェンジアップと多彩だ。特に目を引いたのが大橋との対決。カウント0-1から、149キロのツーシームを内角にきっちり投じ、どんづまりのショートゴロに打ち取った。

捕手が内角に構えていたので、たまたまそこに行ったわけではない。捕手がストライクゾーンを要求したのか、ボール球を要求したのかはわからないが、左投手が左打者の懐に投げ込めるかどうかは、非常に重要な要素だ。

この日投じた11球はすべてホームベース板の上を通過した。制球力のある証しではあるが、見方を変えるとまとまりすぎていて、怖さがない。たまに抜けた球が来ると打者は嫌なもので、特に左打者は左投手の抜け球を嫌がる。

村上のような左の強打者を抑えるには、相手の上体を起こす「見せ球」を使い、踏み込ませないようにしないといけない。そうやって内角を意識させておけば、外角に逃げていくスライダーやカットボールが非常に有効になる。

1つ、驚いたシーンがあった。3人目の打者、梶原と相対したとき、カウント1-1から突然クイックで投げた。梶原もびっくりして、スライダーについ手を出してしまい、三ゴロに終わった。日本で教わったのか、アメリカでもやっていたのか。ここで成功するんだという、強い意志の表れと解釈した。(日刊スポーツ評論家)

◆イアン・クロール 1991年5月9日、米国イリノイ州生まれ。ニュークアバレー高から09年ドラフト7巡目でアスレチックス入団。13年ナショナルズに移籍しメジャーデビュー。タイガース-ブレーブス-エンゼルス-メッツ-レッズ-ツインズ-タイガースと渡り、今季はパドレスとマイナー契約。3Aで1勝1敗2セーブ。防御率7・46。メジャー通算243試合で8勝6敗1セーブ、防御率4・49。左投げ左打ち。