<イースタン春季教育リーグ:DeNA2-1日本ハム>◇15日◇横須賀

12日の教育リーグに続き、日本ハムの高卒5年目・田宮裕涼(ゆあ)捕手(22=成田)のスローイングとバッティングについてリポートする。

   ◇   ◇   ◇

長くファームの試合を見ていると、偶然という場面に何度か出くわす。たまたま数日間のうちに同じ選手のプレーを見ることができるのもまた、ファームに足を運ぶ私にとっては発見につながる。

今回の偶然では、ちょっとした喜びもあった。わずか3日前、私は鎌ケ谷で田宮のイニング間の送球に対して指摘をした。もっと、実戦を想定した動作、スローイングをするべきだろうと。それが、この日の田宮は6回まで5度あったイニング間の投球練習で、5度とも実戦を感じさせる速さと強度のスローイングをしていた。

3日前の田宮は、ボールを握り直して、自分のタイミングでゆっくり投げていたが、この日は走者がスタートを切ったことを想定しているかのように、素早くスローイングのトップに入り、ステップもスピーディーに、力を入れて正確に投げていた。

明らかに違うこの差に気が付き、やはり少しうれしい気持ちになった。変化するファーム選手を見るのは本当に気持ちがいい。可能性が少し膨らんでいくようで、その気づき、工夫、現状打破しようという意欲が、これからも継続されることを願うばかりだ。

試合では2度盗塁を企画され1度許して、1度は刺している。盗塁を刺した時の二塁までのスローイングのタイムは1・98だった。2秒を切れば合格点という中で、まずまずのスピードだった。イニング間での練習が功を奏したわけではないだろうが、少なくとも意識付けはプラスには働いているはずだ。

盗塁を許したケースではタイムは1・99。ピッチャーがモーションを盗まれており、加えて俊足の走者だった。こういう状況で盗塁を刺すのは極めて困難になる。それこそ、WBC代表のソフトバンク甲斐くらいの速さと強肩と正確さを持ってして、アウトにできるかどうか、という盗塁のシーンだった。

ただし、これは私の持論だが、どんな状況でもベストの送球をしようと、コーチ時代には若い捕手に伝えてきた。もちろん、盗塁阻止はピッチャーとの共同作業になる。クイックをしないピッチャーでは、走者の足にもよるが、モーションを盗まれた時、刺すことは厳しくなる。

それでも、モーションを盗まれたからあきらめましたは通用しない。その中で、ベストの送球を二塁に送る。それが捕手ができる最大限のプレーになる。1・99の送球はややボールが浮いた。浮かずに、ベストのコントロールだったとしても、セーフだったと感じるが、田宮のどんな時も、常にベストを尽くそうという意識は感じられた。

また打撃では4打数2安打だった。3日前は、カウント1-0のバッティングカウントで内角の厳しいボールに手を出して捕邪飛だった。この日は、特に追い込まれてから、内角の厳しいボールをカットして粘る姿勢が感じられた。

追い込まれて、変化球を頭に入れながら厳しい内角真っすぐをカットするのは、かなりの技術を要する。そして、バッティングカウントで内角の厳しいボールを仕留め損なうことと比べると、試合状況にもよるが、前者の方が技術的には上になると感じる。

バッティングカウントで内角真っすぐを仕留めに行くなら、厳しいボールと甘いボールの見極めが非常に重要になる。田宮には、こうした部分での見極めが必須になるだろう。そして、この日見せた厳しいボールをファウルでしのぎながら粘れた部分には、技術を上げていこうとする意識も感じられた。

たまたま2度プレーを見て、そこに違いがあったからと言って、短絡的に意識が変わったとか、成長したと断定的に言う意図はない。偶然にも同時期のプレーを見ることで感じた変化を、上を目指せる兆しとして前向きに捉えたい。こうした取り組みは、習慣になるまで、体に染み込むまで継続することが、特に若い選手には必要だ。

自分が陥りがちなポイントを忘れず、地道に継続すること。その先に1軍への道が開けることを切に願う。(日刊スポーツ評論家)