宮崎大好きエースが、チームの歴史を変えた。12日に行われた全日本大学選手権1回戦。創部32年目の宮崎産業経営大(九州南部)が、出場22回目の創価大(東京新大学)を6-2で破り、初出場初勝利を挙げた。先発の杉尾剛史投手(3年=宮崎日大)が8回4安打2失点、10三振を奪う好投で試合を作った。三輪正和監督(54)は「正直本当なのかなと。彼(杉尾)が、一番ナイスピッチングをしてくれた」とたたえた。

 杉尾の左手にはめられた黒いグラブは宮崎和牛の皮製。宮崎県のシルエットの刺しゅうも施されている。宮崎日大3年時に、夏の甲子園に出場するも初戦敗退し「宮崎県民の期待に応えられなかった」と悔いが残った。地元宮崎で野球を続けたいという思いだけで宮崎経産大に進学。当初は専用グラウンドのない環境、サークルのような雰囲気にとまどった。今はオフは週1日だが、当初は3日。授業があるため、練習開始から全員がそろうことも難しい。「雨の時とかは2時間練習して(自主練習せず)1人残らず帰っちゃう。そんな感じでした」。そんなチームを変えたいと、1年生の時からミーティングでは「情けないですよ」と厳しい言葉を投げかけた。当初はチームから浮いていると感じたこともあったが、新チームになってからは朝7時半から全員で集まって自主練習するなど、じょじょに変わり始めた。

 「自分だけでやっても野球は勝てない」。杉尾自身も変わった。週4日行っていた居酒屋のアルバイトを今年になって辞めた。野球に専念すると決めたからだ。ピッチングを指導してくれる専門のコーチはいない。地元宮崎で行われるプロ野球のキャンプや映像を見て、独学でフォームを研究した。「チームとしてこの舞台で少しでも成長していきたい」と杉尾。宮崎県への恩返しは続く。【磯綾乃】