九州の高校野球ファンなら「もったいない」と思う対戦だった。佐賀で来年のセンバツ出場に大きな参考となる秋季九州大会が行われている。その準々決勝。勝てば出場がほぼ確実となる4強入りが決まる。勝ったチームは、まるで「夏の県決勝」のように喜ぶ光景が見られる。

10月21日に取材した準々決勝では、明豊(大分)と沖縄尚学が対戦した。ともに全国的にも強豪。この2チームで負けたチームはセンバツから大きく遠のく。どちらも出場させてあげたい。個人的な感情だが、うなずいてくれるファンはいると思う。

その2チームの監督には共通点がある。

明豊の川崎絢平監督は智弁和歌山の遊撃手として3年連続夏甲子園に出場し、1年時に全国Vを経験した。監督として、今年のセンバツで4強入りを果たした。

沖縄尚学の比嘉公也監督は、ご存じの通り、沖縄尚学3年の1999年(平11)センバツで沖縄に初の全国Vをもたらした優勝投手。母校の監督就任後も、現ソフトバンク東浜を率いて2008年(平20)センバツを制した。投手として監督として甲子園の頂点を経験した。

この2人は、俗にいう「同学年」だ。川崎監督は1982年の早生まれで、比嘉監督は1981年生まれ。2人が現役時代に甲子園で対戦したことはなく、監督として公式戦で初対決した。

結果は壮絶なシーソーゲームの末、8回裏に3点を勝ち越した沖縄尚学が、9回表に明豊の集中打に逆転を許して敗れた。

比嘉監督 どれだけ併殺でチャンスをつぶして(8回まで4度)も、最後まで攻めの姿勢を曲げなかった。すごいですね。押しの強さに負けました。

川崎監督 相手投手はすごい投手ではないが、ここという時は併殺を打たせて切り抜ける術を知っている。さすが左腕出身の監督が育て上げただけあります。終盤の粘りもすごい。いいチームと接戦ができて、いい勉強になった。

一般的には「若い監督」の部類であるだけでなく、グラウンドでのユニホーム姿は、一瞬、選手かと勘違いしてしまうほど、体形が崩れていない。取材でも質問に対して、ごまかすことなく真っ正面から応えてくれる姿勢もそっくりだ。

おそらくだが、2人とも向学心が、旺盛だからだと思う。どんな人でも話には耳を傾ける姿勢は大事だ。これから九州の高校野球界を長く引っ張っていく存在になるに違いない。

甲子園の決勝で、2人の対決を見たくなった。【浦田由紀夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「野球手帳」)