阪神対中日 7回裏阪神2死満塁、大山は三塁ゴロに倒れ好機に得点できず、このあと交代となる(撮影・加藤哉)
阪神対中日 7回裏阪神2死満塁、大山は三塁ゴロに倒れ好機に得点できず、このあと交代となる(撮影・加藤哉)

若き4番打者として期待をかける大山悠輔が試合途中でベンチに退いた。今季13試合目のことだ。5点を追う7回。相手の継投策につけ込んで3点を返し、なおも2死満塁。この大チャンスで、しかし、力なく三ゴロに倒れた直後の交代だった。当然、今後を見据えて試合のポイントになる場面だろう。ヘッドコーチの清水雅治に聞く。清水は潔くというのもおかしいが足を止めてきっちり話した。

「あそこに投手を入れて、ということだったんですけど。まあ打っていたら代えてないですよね。監督も我慢している。(明日も)4番で使うと思いますけど」

生え抜きの若手4番育成という命題に向かって首脳陣も懸命だろう。だけどその後の展開を見て、こちらは少し違うことを考えてしまった。

大山の後の4番にはリリーフ投手が入った。最初に投げたのは今季新加入のピアース・ジョンソンだ。これにより、あくまでスコアボード上での話だが少しの間だけ「4番 ジョンソン」と文字が浮かび上がった。往年の虎党には懐かしい光景だったかもしれない。

マーク・ジョンソン。阪神第80代の4番打者である。20年前の話だ。野村克也が指揮を執った99年、新外国人として来日。前半戦だけで19本塁打を放ち、一時は首位に立ったチームに貢献した。もっとも後半戦は徹底的にマークされ、わずか1本塁打。そのシーズン限りで退団した。

長身でハンサム。片言英語での取材にも笑顔で対応する好青年だった。担当記者だった当時のことを思い出した。もちろん試合途中とはいえ、阪神の4番に「ジョンソン」という名前の選手が入るのはあれ以来ではなかったか。

この試合、阪神のスタメンに外国人選手はいなかった。2年目のナバーロはレギュラーではない。右ふくらはぎの張りを訴えた新加入のマルテは2軍でも打撃練習をしていないという。対して中日ビシエド。すさまじい2発で4打点。これで試合が決まった。

和製打線が悪いわけではないが、やはり非力さは否定できない。ロサリオで泣いた昨年と現状、何も変わっていない。大山を4番打者として育成するのはいい。だが周囲に迫力のある打者を据えないと、なかなか、それも簡単ではない。福留孝介、糸井嘉男はいるが、やはり大物打ちの外国人選手が欲しい。そう思ってしまう。

若手育成に時間はかかる。昔と違い、いまはファンもそれを理解し、待っていてくれると思う。それでも、やはり甲子園では勝ってスカッとしたい。難しい。(敬称略)

阪神時代のマーク・ジョンソン(1999年6月1日)
阪神時代のマーク・ジョンソン(1999年6月1日)