巨人に連勝を決めた阪神、8回の攻撃は「リクエスト失敗」で終わった。2死一、二塁で糸原健斗が左前打。これで二塁走者・木浪聖也が一気に本塁へ突っ込んだ。クロスプレーの結果は「アウト」。これに対し、指揮官・矢野燿大がリプレー検証を求めた。しかし判定は変わらなかった。

このとき「セーフ! セーフ!」と両手を広げ、ベンチに強くアピールしていたのが原口文仁だった。次打者が投手だったので攻撃が続けば代打に出る予定だった。そのためクロスプレーのとき、近くに寄って見ていた。だがアウトは変わらず、チェンジで打席は原口に回らなかった。その心境を聞いてみたかった。

話し掛けると「ボクですか? 何ですか?」と原口は苦笑した。試合に出ていないのになんなんだ、と言うことだろう。もっともだが興味は最後の場面である。あそこは自分が打ちたかったからアピールしたの? ということも含めて。

「いやあ。足が入ったと思ったんですけどね。だからアピールしたんです。自分が打ちたいからとかそういうのは考えてなかったですよ。あの瞬間は」

いかにも原口らしい答えに納得する。それでも打ちたいと思うのは選手なら当然だし、微妙なプレーでアピールするのも当たり前だ。それについて虎番キャップの取材を終えた後に聞いた矢野は、こう話した。

「ボクらはベンチからなんでね。やっぱり近くで見ている選手がああやって言ってくれたら行きやすい。原口が打ちたいのもあったでしょうけど。ああいうのは大事です」。真面目な顔で原口の“サポート”を歓迎した。

何を書いているのか。いよいよ全員で戦うのだ、ということである。糸井嘉男が今季、戻ってこれないかもというニュースが飛び込んできた。鳥谷敬を巡る状況もある。いろいろな要素はあるが試合に出ている選手、ベンチに入っている選手は全員、勝つために、そのためだけにプレーすることが何より重要だ。それをあらためて言いたい。それがすべての原点だろう。

9月に入った。残りは20試合ジャスト。3位広島へは2ゲーム差だ。Aクラス入りのチャンスはまだある。ここでやらなければ、いつやる。ここで集中できるかどうか。それが来季、優勝を争えるかどうかにつながる。順位、結果以上に、最後まで頼もしい戦いぶりを見せてほしい20試合だ。(敬称略)

阪神対巨人 8回裏阪神2死一、二塁、木浪は糸原の左前打で生還を狙うも好返球で憤死する。捕手は大城(撮影・上田博志)
阪神対巨人 8回裏阪神2死一、二塁、木浪は糸原の左前打で生還を狙うも好返球で憤死する。捕手は大城(撮影・上田博志)