18年まで監督として広島に3連覇をもたらした緒方孝市(日刊スポーツ評論家)には怒るポイントがあった。圧勝している試合でも守備や走塁の面で自軍に緩慢なミスが出たときだ。普段はクールだが、そういうときはベンチの中で顔色を変えて怒っていた。

「そこまで勝っているじゃないかとか、そんなことは関係ないんです。そういうプレーが出ると流れが変わってしまう。野球をずっと見ていれば分かると思いますが、そういう後は必ずピンチが来るものです」

理由を聞いたとき、緒方はそんな説明をしていた。それを思い出したのは言うまでもないガルシアの急変ぶりに接したからだ。大山悠輔の“6ラン”などで序盤は楽勝ペース。しかし6回裏にガルシアが連続四球を出すと突然乱れ、とんでもない展開になった。

結局、7点を先制しながらの引き分け。負けに等しいドローなのは言うまでもない。ガルシアがおかしくなったことが最大の要因として、では、そこまでに何があったのか。試合中、ずっと考えていたが特に思い当たらなかった。唯一、これでは勝てないかも…と思った点を除いては。

まず6回だ。DeNA山崎康晃の登板に少し驚いた。その時点で7点差である。不調なのは知っているが今季途中までクローザーだった男が“敗戦処理”扱い。こういう起用は初めてではないようだが、それにしても…と思った。

以前にも書いたが山崎は阪神戦を比較的、苦手にしてきた。自分でも認めていた。だからダメ押しできるか-と思ったが亜大の後輩・木浪聖也が空振り三振に倒れるなど3者凡退で簡単に抑えられた。

すると阪神打線はこの回を含め、DeNAが繰り出した6投手から5イニングで2本のヒットしか打てなかったではないか。経験の少ないルーキー坂本裕哉には「これでもか」と襲いかかったがその後の投手にはからきしだった。

もちろん「打線は水物」だし、繰り返すがガルシアの問題が一番大きい。それでも2番手以降の投手をまるで打てなかったのは、それが実力だからか。あるいは大量点による油断があったからなのか。

安打を放てないのはミスではない。だがDeNAは7点差でも果敢に挑んできたではないか。やられたらやり返すという気迫が首脳陣以下、チームに足りないように見えて仕方がない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

DeNA対阪神 8回表阪神1死二塁、見逃し三振に倒れる木浪(撮影・清水貴仁)
DeNA対阪神 8回表阪神1死二塁、見逃し三振に倒れる木浪(撮影・清水貴仁)