ペイペイドーム、以前の福岡ドームは忘れられない球場だ。個人的な話に少しだけお付き合いいただきたい。虎番キャップだった03年。闘将・星野仙一の下、歓喜のリーグ優勝を果たして王貞治率いるダイエーとの日本シリーズを迎えた。ご存じの通り、福岡で連敗したが甲子園で3連勝し、再び福岡に乗り込んだ。一気に決めたかった第6戦に阪神は負けた。その後だ。

星野を取材するため横に並んで歩いていると「おい!」と封筒を差し出してきた。こんなときに何やろ? と思って受け取ると第7戦のチケットが2枚。意味が分からず、もらっていいものかどうか迷った。

原稿を書いた後、電話をして「あれはオレにくれたということですか? そうならプラチナチケットだし、こちらの知人にプレゼントしようかと思うんですけど…」と聞いた。

「おまえにやったモン、どうしようとおまえの勝手やないか」。星野はそう言って電話を切った。今、振り返れば、あのタイミングでよくもそんなくだらない電話をかけたものだと冷や汗が出る。第7戦発生の時点で関係者が気を利かせて星野に渡したものの、星野にすれば歓迎しないゲーム。それもあって渡してきたということのようだ。

その印象があまりにも強いので阪神は福岡でほとんど勝てていないと思っていた。同時に阪神は「ホークス」に縁がある。過去6度の日本シリーズ進出で64年の南海、03年のダイエー、そして14年のソフトバンクと3度まで戦っている。それと同時に福岡で苦戦したイメージが残るのだ。

だからこの日、主砲・大山悠輔の先制弾で連勝したことに衝撃を受けた。「福岡で阪神の連勝なんてあったかいな?」。記録部に問い合わせてみる。

すると“すごいこと”を教えてくれた。まず03年のオープン戦。3月7、8日に8-0、12-3と打線の爆発で連勝していた。さらに05年の交流戦。5月21、22日に連勝している。つまりオープン戦、交流戦、さらに日本シリーズを通じ阪神が福岡で連勝するのはこれが3度目ということだ。

もうお気づきだろう。03年、05年と言えば…。阪神がリーグ制覇している。たかだかオープン戦で勝って浮かれるのは恥ずかしい。それでもやっぱり“吉兆”と受け取りたい。こうなれば7日、一気に3連勝して星野がよく口にした「勝ちグセ」をつけてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

ソフトバンク対阪神 最後を締めた加治屋(中央)とグータッチする阪神ナイン(撮影・梅根麻紀)
ソフトバンク対阪神 最後を締めた加治屋(中央)とグータッチする阪神ナイン(撮影・梅根麻紀)