佐藤輝明が加入してから注目しているのが高山俊の表情だ。6日のソフトバンク戦の5回。カウント3-0から大きな中飛を放った佐藤輝に対し、高山がベンチで「おい! もう少しじゃん!」という感じで目を見開いて声を掛けていた。

プロ野球選手のメンタル…というと大げさだが過去の取材で分かったことがある。それは我々メディアなどよりも選手同士の方がはるかに正確に、そして厳しく他の選手の力を分析しているということだ。

「こいつは打つぞ」「マスコミで騒がれているがそうでもないな」。そんな視点をきっちり持っている。高山が佐藤輝についてどう考えているか、まだ聞いていないが間違いなく「こいつはやる」と思っている。だからこそ佐藤輝の様子に反応しているのだ。

右投げ左打ち、大卒ドラフト1位。佐藤輝は三塁も守るのでそこは違うが、2人は似ている。指揮官・矢野燿大もそこを十分、意識し、機能させるつもりだ。今年の初実戦として行われた2月4日の紅白戦、両軍の1番打者にこの2人を配置したときのこと。

「佐藤輝と俊(高山)がお互いライバルとして『よーし、負けへんぞ』って。テル(佐藤)の方はないかもしれないけど、俊は絶対あるよ。他の打順で並べるより、その方が(気持ちが)入るじゃん」。ハッキリそう言っていた。佐藤輝が日々、本物であることを証明していくに従い、高山も気合が入るだろう。

この日の広島戦、6番三塁・佐藤輝、7番左翼・高山と2人が並んだ。実戦で「佐藤輝→高山」の並びになるのはこれが初めて。その逆の「高山→佐藤輝」で並んだのは2月9日の日本ハム戦(宜野座)で1度だけあった。

1番右翼・高山、2番左翼・佐藤輝だったがその試合で佐藤輝は「タテジマ初本塁打」をマークしている。偶然だろうが、高山だけでなく佐藤輝にもドラ1左打ちの先輩に負けんという気持ちはあるはず。高山は新人王を獲得しているし、右打ちの大山悠輔よりも意識する相手と言える。

そして高山も“佐藤輝効果”かどうか落ち着いている。天才型の常で、いいときはいいが悪いときはさっぱりという感じがついて回ったが今は違う。この日も佐藤輝の本塁打直後に鋭い当たりを放っていた。厳しいポジション争いだが公式戦でも、この並び、結構、いけるのではないか。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)