敵将・原辰徳が審判に“抗議”した気持ちは分かる。ホーム側リードの展開、悪天候でやめるなら先攻の攻撃が終わったタイミングだろう。巨人にすればビエイラを投げさせなくてよかった。おかげで虎党は佐藤輝明の「もう少しでサク越え」を見ることができたのだが。原にすれば元気のないチームにカツを入れる気持ちもあったかもしれない。そんな予想をするほど圧勝の巨人1回戦だった。

それにしても糸原健斗だ。これで開幕から10試合連続安打。勝負強い打者なのは知っていたが、ここまで安打が続くとは。打率はジャスト4割をキープ。たいしたヒットメーカーぶりだ。3回に先頭打者で左前打を放つと一気に打線がつながり、4得点。巨人打線のやる気を奪った。

こうなると気が早いけれど「開幕からの連続試合安打」がチラリ頭をかすめてくる。この記録は24年前の97年に達成された「24試合」だ。さて、その保持者は誰でしょう?

ベテランの虎党なら分かるだろう、和田豊だ。タテジマひと筋で監督も務め、現在は阪神の球団本部付テクニカルアドバイザー(TA)。右打ちの得意な勝負強い右打者だった。説明は不要かもしれないが。

誰でしょう? と聞いたときにイチローの名前が頭に浮かんだ方もいたのではないか。なにしろ、安打記録のことになれば、どこにでも名前が出る男だ。

和田が記録をつくった97年はイチロー擁するオリックスが日本一になった翌年。まだオリックスでプレーしていた。5月あたま、和田が記録を達成したとき、イチローに感想を聞いた。そのときの内容は今でも覚えている。

「開幕からっていうのがすごいですよね。開幕から続けて打てるっていうのはそれだけの実力があるっていうことですよ」

イチロー自身、春先はあまり調子の上がらないスロースターター。それもあって自分より11歳上の打者をたたえたものだ。

同じ阪神の二塁手として糸原がそこに挑戦するのは面白い。もちろん、まだ半分もいっていないし、早過ぎるといえばそうなのだが、今の調子を見ていたら少しだけ期待したくなる。

ちなみに2位は中日・井上一樹の21試合だ。現在の1軍ヘッドコーチ。まずはそこへの挑戦だ。そんな妄想を広げているうちに「巨人に3連勝!」となっていたら、それも楽しい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対巨人 3回裏阪神無死一、二塁、大山の中前適時打で生還する糸原(撮影・前田充)
阪神対巨人 3回裏阪神無死一、二塁、大山の中前適時打で生還する糸原(撮影・前田充)