やはり失策はこわいと思う場面があった。序盤から大山悠輔の4打点で楽勝ムードだった試合に陰りが出たのは7回裏だ。この回、先頭のビシエドが放った遊撃へのゴロを中野拓夢がバックハンドで処理しにいったもののはじいてしまった。

この失策を契機に安打、四球であれよという間に無死満塁のピンチ。ここを併殺崩れの1失点だけでこらえた2番手・小林慶祐を褒めるしかない展開だ。

「拓夢がなあ。もちろん深い位置やけど、そんなに慌てんでもビシエドやったらアウトにできると思うしね。やっぱり先頭打者をエラーで出すというのは…。もちろんルーキーやし、失敗して成長していくというのは俺もずっと言っていることやけど」

あまり選手を責めないタイプの指揮官・矢野燿大にしても失策からの悪い流れはこたえたのだろう。自ら中野の名前を出してコメントするほど。それほど大きなプレーだった。

これで中野は4失策。セ・リーグの遊撃手ではワースト・タイだ。あとは中日の京田陽太、そして木浪聖也だ。京田はばりばりのレギュラー。ルーキーの中野には気の毒な気もするが木浪と2人して、やはり多いと言わざるを得ない。

阪神のこの2人はスタメン数でも並んだ。この日、中野は11試合目の遊撃スタメン。木浪と同じ数となった。もう1人、巨人から移籍してきた山本泰寛が6試合スタメンを務めている。

投手を除くメンバーがほとんど固定されている今季の阪神。「8番・遊撃」だけ顔ぶれが変わる。この中日3連戦は“日替わり”だった。初戦が山本、前日28日が木浪、そして中野。これまでの9カードでは誰かが2試合以上、スタメンだったので10カード目にして初の“日替わり遊撃手”だ。

生え抜きに新人、移籍組の「遊撃3人衆」。打撃面では中野がややリードしているようだ。この試合も9回のダメ押し適時二塁打はもちろん、2回2死走者なしからの左前打もよかった。チェンで攻撃を終え、3回に1番から始まる流れを作るのに貢献した。

いつかはレギュラーも絞られるのだろうが今は競争が続く。ファームから小幡竜平も狙っている。今更だが鳥谷敬が去った阪神で遊撃はもっとも“熱い定位置”だろう。その争いが首位を走るチームの熱さにつながっているのならば、もうしばらく、見守りたい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)