同点の8回、1死走者なし。ここで打席に佐藤輝明なら打順どうこう関係なく、狙うのは本塁打だ。そこでキッチリ打つ。素晴らしいというか、これが佐藤輝の持つ魅力、スター性だ。エキシビションマッチ4試合で4本目。佐藤輝が本塁打した試合は全勝となっている。

今月7日のヤクルト戦で20号をマークした際、意外に「空砲」が多い、とこの欄で書いた。前半戦18試合で放った20本塁打。その試合結果は10勝8敗だ。5割以上はあるが、せっかく怪物ルーキーが本塁打してるんだから、もっと勝ってほしい。その意味では現在は理想的な展開だ。

と書いた後で水を差すようで申し訳ないけれど、そこは、やはり、エキシビション。三振量産の理由になっている厳しい内角攻めはほとんど見受けられない。

3回、大山悠輔には抜けたような球が来て、一瞬、ヒヤリとさせたが、この段階で相手に死球を当てることはどこも避けたいはずだし、佐藤輝にすれば気持ちよくスイングできている日々だろう。もちろん非凡な打力があるから打てるのは間違いないのだけれど。

今季の阪神は打力が売りだ。1発もこれまでに比べれば多い。佐藤輝に限ったことではないが本塁打で勝負が決まるのはワンサイドゲームもあるが、結構、この日のような接戦が多いのもプロ野球だ。そんな接戦にいかに持っていくかは1つのポイント。そのために投手陣の踏ん張りはもちろん、重要なのは攻守での細かいプレーだろう。

この試合、いいなと思ったのは7回、無死走者一塁から中野拓夢がヒットエンドランを決めたことや、その直後の一、三塁で島田海吏が“偽装スクイズ”を見せて一塁走者を二塁に進めたプレーだ。こういうのは試合が締まる。

過去に例のない「真夏のオープン戦」はこんな繊細な策を練っていく場でもあるはず。指揮官・矢野燿大も「いろんなサインの確認もあるし…」と話し、この期間をしっかり使う狙いを示していた。

「う~ん」と思わせる場面もあった。1回、2死一塁から中野が失策。6回の1死一塁では一塁走者・大山がサンズの二直で戻れず、併殺に。あれは大山のレベルなら戻れたと思う。いずれにしても1発で勝つためにこそ、細かいプレーを大事にしてほしい。そう思わせるゲームだった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対西武 9回表西武無死満塁、生還を狙うも中野拓夢の送球でアウトとなる愛斗。捕手は長坂拳弥(撮影・上田博志)
阪神対西武 9回表西武無死満塁、生還を狙うも中野拓夢の送球でアウトとなる愛斗。捕手は長坂拳弥(撮影・上田博志)