来季の4番は誰になるのか。失策の問題は。そして経験は積めたのか。課題噴出-。指揮官・矢野燿大の3年目が終了した今、そんな気持ちでいっぱいだ。

12球団最多の77勝をマークしたが短期決戦で1勝もできず、巨人の前に屈した。「勝負は時の運」というのは事実だろう。しかし阪神はその運をつかめなかった。まさに“全集中”でそれを取りに来た巨人との大きな違いである。

4番を任されたマルテは2試合で2安打だったが効果的な1本は出なかった。シーズンで主砲を務めた大山悠輔、佐藤輝明は不調のまま終わった形だ。この状態なら来季の4番打者は誰になるのか。現状ではまったく見えない。

そして課題の失策。数は減ったものの、大事なところで出た。広島3連覇監督・緒方孝市(日刊スポーツ評論家)は対戦前に「ミスは命取り」と指摘。頭と体で準備しておかないとダメと警鐘を鳴らしていた。

しかし2点先制後の3回に中野拓夢が記録し、8回には大山悠輔がやった。いずれも先頭打者。それが得点になった。“勝負にたられば”はないが、この2点がなければ同点だった。

そして「経験の差」である。2試合の貢献でお立ち台に上がった丸佳浩が象徴的だ。昨季まで広島と巨人で“1人5連覇”を果たした男。修羅場の経験は誰にも負けない。丸自身、そこには大きな自信を持っている。いまの阪神にそんな選手はいない。シーズン、CSを通して阪神ナインはそれを培ったのか。

矢野自身もそうだ。前日スタメンにいなかった大山、佐藤輝、梅野隆太郎を起用。その梅野と佐藤輝で先制点を奪った。それは結果論として自身が言うようにチームを本当に「全員野球」「一丸野球」へ導けたのか。途中で元気がなくなったのも気になった。

見せ場も多かった今季だったがシーズン2位に終わり、一昨年は横浜スタジアムで突破できたCSファーストステージも本拠地で勝てなかった。勝敗を分けるものは紙一重の差。そこを埋めるためにどうすればいいのか。勝利数など多くの面で結果を残した今季だけに、余計、痛感する。

「失敗からしか学べない」と言ったのは緒方だ。「チーム全体の成長も必要だしボク自身の成長も必要」。そう口にした矢野。チームも指揮官も“失敗”と言うには悔しいシーズンから成長するしかない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)