江越大賀の打席が見たかった。そう感じた。甲子園でのオープン戦は楽天に連敗。先発・藤浪晋太郎の乱調もあって終始、楽天ペースで進んだ。ようやく終盤に単打で2点を返した攻撃は足も絡め、指揮官・矢野燿大の目指す野球の可能性を少し感じさせたけれど、甲子園に足を運んだ虎党のほとんどは物足りない思いだったろう。

なんというか旬(しゅん)だと思う。江越は。プロ8年目の選手にそんな表現もおかしい気もするが、やっぱり旬だろう。8年目、まさかのブレークの予感。虎党は、いや野球ファンはそういうロマンを感じていたいのである。

しかし江越の出番はなかった。序盤から走者がほとんど出ず、スタメンで出た選手にある程度の打席数を与えたいというベンチの思惑はあっただろう。そこで思ったのはロハスだ。9回、第4打席まで立たせた。

客観的に見ればロハスは競争する立場にある。しかし、そこはやはり助っ人。こんな一方的な試合の流れで、9回2死無走者で、いわゆるモチベーションがどれだけあっただろうかと思う。4打席見て、6日以降の起用を考えたい狙いだったかもしれないが、ここは競争相手であるはずの江越を代打で使ってほしいと思った。

江越だけではない。この2試合とも、まあこういう顔ぶれになるだろうというスタメンだった。高寺望夢、遠藤成、あるいは熊谷敬宥といった若手は試合終盤にチラリと出ただけ。これはシーズンでの起用法だろう。

オープン戦と言ってもあっという間に時間は過ぎる。最後の1週間、5試合ぐらいはレギュラー格で戦うはず。そうなれば若手をスタメンで試せるのは来週ぐらいまで。そう思えば、もう少し大胆に試してもいいのかという気はした。

もちろん試している部分もある。この日のスタメンだった「1番島田海吏 3番近本光司」は新しい得点パターンとして矢野の頭の中にあるはず。

「まだまだ全体の状態が上がらんからさ。我慢だと思うし、その我慢の中からこっちとしては開幕へ向けて絞っていかないとダメなんで」。矢野も苦しい現状を虎番記者の取材に、そう話したようだ。いずれにせよ限られた調整期間である。選手の「旬」や「勢い」といったものも起用の方針に加えてほしい。そう感じている。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)